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ケアマネ事業所が指定取消し。「記録がないのに減算せず請求」と「監査中の記録修正」は何が問題だったのか

こんにちは、ぺーさんです。

青森県八戸市が、市内の居宅介護支援事業所(ケアマネジャーの事業所)の指定を取り消すと発表しました。ニュースでは「不正な介護報酬の請求」と「記録の修正」と報じられています。

「うちは訪問介護だから関係ない」「障害福祉だから関係ない」と思うかもしれません。でも、この事案の中身は「やるべき業務と記録がそろっていないのに、満額で請求していた」ということと、「監査が入ってから記録を直した」ということです。これは、どのサービスの事業所でも起こりうる話です。

今回は、市の公表資料で確認できたことを整理したうえで、何が問題だったのか、私たちの事業所が何を見直せばいいのかを考えます。

※本記事は公表されている範囲の概要に触れるのみで、事業所名などの固有名詞や、個別の事案の詳細には立ち入りません。

市の公表資料で確認できたこと

八戸市が2026年10月21日に公表した資料によると、内容は次のとおりです。

  • サービスの種類:居宅介護支援(ケアマネジャーがケアプランを作る事業所)
  • 処分:指定の取消し(通知は10月20日、取消しの日は11月18日)
  • 根拠:介護保険法第84条第1項第6号(不正請求)・第7号(虚偽報告)
  • 不正の期間:2023年4月〜2026年3月の約3年間

不正の内容

  1. 不正請求:ケアプランの作成に必要な一連の業務を行っていない、または記録などを適切に残していないのに、「運営基準減算」をしないで介護給付費を請求していた
  2. 虚偽報告:監査の期間中に、一部の利用者の記録データを修正した

お金の扱い

返還額は事業者と協議中で、公表資料では金額は確定していません。不正に請求した分には、返還額に加えて 100分の40(4割)の加算金 を請求する予定とされています。報道では、不正請求は約2,600件とされています。

なお、同じ八戸市では、今年5月にも別の居宅介護支援事業所が指定取消しを受けています。

「運営基準減算」とは

今回のポイントは、「運営基準減算をせずに請求した」という部分です。

居宅介護支援には、ケアマネジャーが必ず行うべき業務が決められています。それを行っていない月は、報酬を減らして請求しなければなりません。これが運営基準減算です。

減算になる主なケース(自治体の集団指導資料より)

  • 利用者の居宅を訪問して、本人や家族と面接(アセスメント)していない
  • サービス担当者会議を開いていない(やむを得ない事情がある場合を除く)
  • ケアプランの原案を説明して文書で同意を得て、本人と担当者に交付していない
  • モニタリングで利用者と面接していない
  • モニタリングの結果を記録していない状態が1か月以上続いている

減算の大きさ

  • 該当する月は、所定単位数の 100分の50(半分)
  • 運営基準減算が 2か月以上続くと、報酬は算定できません(ゼロ)

モニタリングの面接は、原則として毎月の居宅訪問です。2024年度の改定で、条件を満たせば「2か月に1回は訪問し、訪問しない月はテレビ電話等」という方法も認められました。ただし、本人の文書による同意や、サービス担当者会議での主治医などの合意といった要件があります。要件を満たしていなければ、これまでどおり毎月の訪問が必要です。

つまり、「訪問していない」「記録がない」月は、本来なら半分、続けばゼロで請求しなければならないのに、満額で請求していた。これが今回の不正請求の中身です。

何が「取消し」にまでつながったのか

ここからは私の考えです。

1. 「やっていても、記録がなければ、やっていないのと同じ」

公表資料には「業務を行っていない、または記録等を適切に行っていない」とあります。仮に実際は訪問していたとしても、記録が残っていなければ、運営指導や監査では「行っていない」と判断されます。

介護保険でも障害福祉でも、請求の根拠は記録です。記録は「あとで書けばいい事務作業」ではなく、「報酬をもらうための証拠」だと考える必要があります。

2. 監査中の記録修正は、いちばん重い判断につながる

今回、不正請求に加えて「虚偽報告」が処分理由になっています。監査が始まってから記録データを修正したことです。

記録の不備そのものなら、運営指導での指摘や返還、改善報告で済むこともあります。でも、監査の最中に記録を書き換えると、「事実を隠そうとした」と受け取られます。行政との信頼関係が崩れ、指定取消しという最も重い処分につながりやすくなります。

不備が見つかったときに「直してから見せよう」とするのは、絶対にやってはいけないことです。不備は不備のまま説明し、どう改善するかを示すほうが、結果的に事業所を守ります。

3. 3年間、誰も止められなかった

不正の期間は約3年です。そのあいだ、事業所の中で「これはおかしい」と止める仕組みがなかったことになります。忙しさや人手不足で記録が後回しになり、それが当たり前になってしまう。どの事業所でも起こりうることだと思います。

訪問介護・障害福祉の事業所にも共通する教訓

運営基準減算は居宅介護支援の仕組みですが、考え方はほかのサービスにも共通しています。

訪問介護

  • 訪問介護計画の作成・説明・同意・交付、サービス提供の記録は、運営指導で必ず確認されます
  • 計画がない期間や、記録のない提供は、返還の対象になりえます

障害福祉(居宅介護・重度訪問介護、計画相談支援など)

  • 生活介護などの個別支援計画は、作成していないと「減算」の対象です
  • 居宅介護計画も作成・説明・交付が義務で、運営指導で必ず確認されます
  • 計画相談支援にも、モニタリングや記録をめぐる同様のルールがあります

詳しくは、「計画とモニタリング:サービス等利用計画・個別支援計画・居宅介護計画のつながり」で整理しています。

今日からできること3つ

  1. 記録の「抜け」を月に1回確認する 請求の前に、計画・訪問・モニタリング・提供記録がそろっているかを、利用者ごとに一覧で確認します。抜けがあれば、その月の請求をどうするか(減算や請求しない)をその場で判断します。

  2. 「あとから記録を直さない」ルールを明文化する 記録の修正が必要なときは、元の記載を消さずに、修正日・修正者・理由を残す方法に統一します。電子記録なら、修正履歴が残る設定になっているかを確認しておきましょう。

  3. 自己点検を定期的に行う 運営指導の通知が来てからではなく、半年に1回など時期を決めて点検します。

点検の準備に

ふくしノートでは、運営指導の前に自分で確認できる点検表を無料で公開しています。

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まとめ

  • 八戸市が、居宅介護支援事業所の指定取消しを発表しました(11月18日付)
  • 理由は、必要な業務や記録がないのに減算せず請求した「不正請求」と、監査中に記録を修正した「虚偽報告」です
  • 運営基準減算は、該当月は半分、2か月以上続けば報酬はゼロになる仕組みです
  • 請求の根拠は記録です。「やっていても記録がなければ、やっていないのと同じ」
  • 不備が見つかっても、あとから書き換えず、そのまま説明して改善する姿勢が事業所を守ります

以下は私の考えです。こうしたニュースを見ると、「悪質な事業所の話」と片づけたくなります。でも、記録が後回しになる忙しさは、私たちの現場にもあります。小さな抜けを「来月まとめて書こう」と先送りしないこと。それが、利用者さんと職員、そして事業所を守る一番の近道だと思います。

本記事は、公開されている情報をもとに一般的な内容を整理したものです。最新かつ正確な内容は、各省庁・自治体の公式資料をご確認ください。

参考にした資料