行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

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訪問介護の報酬に「移動の負担」を反映へ。同一建物減算に代わる新しい報酬区分の検討が始まりました(2027年度改定)

こんにちは、ぺーさんです。

2026年10月19日、訪問介護の事業者にとって大きなニュースがありました。厚生労働省が、訪問介護の介護報酬に「職員の移動の負担」を反映する方向で検討する方針を示したのです。

今回は、報道されている内容と現行のルールを整理したうえで、訪問介護事業所を運営する立場から感じたこと、今から確認しておきたいことをまとめます。

※本記事で紹介する内容は、2027年度(令和9年度)介護報酬改定に向けた「検討の方向性」です。具体的な単位数や区分はまだ示されておらず、今後変わる可能性があります。正式な内容は、厚生労働省の資料や通知でご確認ください。

何が示されたのか

報道によると、10月19日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会で、厚生労働省は次のような方向性を示しました。

  • 訪問介護の介護報酬に、職員の移動の負担を反映する方向で検討する
  • 現行の「同一建物減算」に代えて、移動の負担やサービス提供回数、事業所の規模といった実態を反映した報酬区分に見直す
  • 戸建住宅への訪問と集合住宅への訪問、それぞれのサービス提供実態の違いを踏まえた報酬体系を検討する
  • 2027年度の介護報酬改定に向けて、今後詳細を詰める

背景にあるのは、事業所によって「1回の訪問にかかる負担」が大きく違うという課題です。

有料老人ホームなどの集合住宅と同じ敷地に事業所がある場合、建物の中の利用者さんを効率よく回ることができます。一方で、一軒家を一件ずつ訪問する事業所では、住宅が点在する地域ほど移動に時間がかかり、効率的に回ることができません。それなのに、1回あたりの報酬は基本的に同じです。この差を報酬に反映してほしいという声が、以前から上がっていました。

そもそも「同一建物減算」とは

今回「代えて見直す」とされている同一建物減算は、事業所と同じ敷地内や隣接する建物、あるいは利用者が多く住む建物にサービスを提供する場合に、報酬を減らす仕組みです。移動の負担が少ない分、報酬も下げるという考え方ですね。

現行(2024年度改定後)の訪問介護では、主に次の区分があります。

区分 主な対象 減算率
同じ敷地内・隣接する敷地内の建物 事業所と同一敷地内または隣接敷地内の建物に住む利用者 10%
上記のうち利用者が多い建物 同一敷地内・隣接敷地内の建物で、利用者が1月あたり50人以上 15%
それ以外の建物 上記以外の建物で、利用者が1月あたり20人以上住む建物 10%
提供の大半が同一建物(2024年度新設) 正当な理由なく、6か月間に提供したサービスの90%以上が同一敷地内・隣接敷地内の建物に住む利用者向けだった場合 12%

12%の区分は、2024年度の改定で新しく加わったものです。前期(3月〜8月)・後期(9月〜2月)の6か月ごとに判定し、該当すると次の半年間、減算がかかります。

ただ、減算はあくまで「集合住宅向けを下げる」仕組みです。戸別訪問の移動の負担を直接評価する仕組みにはなっていませんでした。今回の見直しは、この点に踏み込む方向だと受け止めています。

訪問介護事業所の立場から感じること

移動時間は「見えないコスト」だった

訪問介護の現場では、移動の時間は報酬の対象になりません。にもかかわらず、ヘルパーさんに移動時間分の賃金を払うのは当然のことですし、ガソリン代や駐車場代、自転車やバイクの維持費もかかります。

特に、住宅が点在する地域や坂の多い地域で、一件ずつ回っている事業所にとって、移動は大きな負担です。サービスの時間は同じ30分でも、前後の移動に30分かかる事業所と、エレベーターで1分の事業所とでは、1日に回れる件数がまったく違います。

この「見えないコスト」が報酬の議論にきちんと乗ったことは、戸別訪問を中心にしている事業所にとって、前向きなニュースだと思います。

とはいえ、中身はこれから

一方で、現時点で示されているのは「方向性」だけです。次のような点は、まだわかりません。

  • 移動の負担を何で測るのか(距離なのか、時間なのか、地域区分なのか)
  • 「サービス提供回数」や「事業所の規模」が、どう報酬に反映されるのか
  • 集合住宅中心の事業所の報酬が、結果としてどう変わるのか
  • 移動の実態を示すために、どんな記録や届出が求められるのか

特に最後の点は、事業所の事務負担に直結します。移動の実態を報酬に反映するのであれば、何らかの形で実態を示す記録が求められる可能性もあります。制度が複雑になりすぎないか、今後の議論を注視したいところです。

障害福祉の居宅介護・重度訪問介護は?

障害福祉サービスの居宅介護や重度訪問介護にも、同じ名前の「同一建物減算」の仕組みがあります。ただ、今回示されたのは介護保険の訪問介護の話です。2027年度は障害福祉サービスの報酬改定も行われる予定ですが、障害福祉の側で同じ見直しが検討されるかどうかは、現時点では示されていません。介護保険と障害福祉の両方を運営している事業所は、両方の議論を追っておくと安心です。

事業所が今から確認しておきたいこと

正式な内容が決まるのは、まだ先です。それでも、今のうちに自分の事業所の実態をつかんでおくと、改定の内容が出たときにすぐ影響を見積もることができます。

  1. 訪問先の内訳を把握する 利用者さんのうち、戸建住宅と集合住宅がそれぞれどのくらいの割合か。同一建物減算の対象になっている利用者さんは何人か。
  2. 移動にかかっている時間を把握する 1日あたり、1件あたりの移動時間はどのくらいか。シフト表や訪問記録から、ざっくりでも数字にしておくと役立ちます。
  3. 移動にかかっている費用を把握する ガソリン代、駐車場代、車両やバイクの維持費、移動時間分の人件費。
  4. 同一建物減算の判定を確認する 6か月ごとの判定(90%要件)を毎回きちんと行っているか。現行のルールでの算定誤りがないかも、この機会に確認しておきましょう。

こうした数字は、改定への備えになるだけでなく、ヘルパーさんの賃金や働き方を考えるうえでも大事な材料になります。

おわりに

訪問介護は、利用者さんの自宅へ「行くこと」から始まる仕事です。その移動の負担が、ようやく報酬の議論の中心に出てきました。

一方で、具体的な中身はこれからです。戸別訪問の事業所が報われる仕組みになるのか、集合住宅中心の事業所にどんな影響が出るのか、そして事務の負担がどうなるのか。引き続き、分科会の議論を追いかけて、このブログでもお伝えしていきます。

参考