相談員から「不正請求」を頼まれた話――原因は他事業所なのに、なぜうちが?
こんにちは、ぺーさんです。
「今月分の身体介護、減らして請求してもらえませんか?減らした分は来月請求してもらえばいいので」
ある日、相談支援専門員さんからこんな電話がかかってきました。うちの事業所は何もミスをしていません。原因は別の事業所の契約にありました。
結論から言うと、私はこのお願いをお断りしました。やっていないサービスを別の月に付け替えて請求するのは、不正請求そのものだからです。
この記事では、なぜこんな話になったのか、そして訪問系の管理者やサービス提供責任者の方が同じ打診を受けたらどうすべきかを、実際の経験をもとにお話しします。※登場する個人名・事業所名は架空のもので、細部も一部変えています。
複数の事業所で支える利用者Aさん
利用者のAさんは進行性の難病があり、普段は電動車いすで生活されています。立ち上がりはできず、起き上がりや姿勢を保つことにも介助が必要です。
同居のご家族は日中お仕事に出ているため、生活の介助はほぼヘルパーが担っています。朝の起床介助、日中の家事援助、夜の就寝介助、それに週数回の入浴介助です。
これを複数の居宅介護事業所と訪問看護で分担しています。
| 事業所 | 主な担当 |
|---|---|
| うちの事業所 | 一部の曜日の起床介助・就寝介助、平日の家事援助 |
| B事業所 | 一部の曜日の起床介助 |
| C事業所 | 残りの曜日の介助、入浴介助 |
| 訪問看護 | ヘルパーが入れない時間帯の対応など |
ポイントは、身体介護の支給量(月の上限時間)は1つで、それを複数の事業所で分け合っているということです。どこかが時間を増やせば、どこかが減らさないと上限を超えてしまいます。
市役所から「支給量を超えています」と連絡が来た
ある月、市役所の障害福祉の担当課から問い合わせがありました。Aさんの身体介護の支給量が月70時間なのに対し、3つの事業所の契約時間を合計すると73時間になっている、という内容です。
うちの事業所は、途中で身体介護の契約時間を増やしたことはありません。自分のところの数字は合っているはずでした。
とはいえ、利用者さんに関わることなので放ってはおけません。まずはこういう連絡があったことを、計画相談の担当である相談支援専門員さんに報告することにしました。
「うちは知りません」から始まった原因探し
相談員さんの返事は「計画どおりに各事業所へ時間を割り振っているので、うちは知りません」という一言でした。
しかし、支給量の範囲で各事業所の時間が収まっているかを確認するのは、計画相談の大事な役割のひとつのはずです。正直、とても冷たく感じました。
仕方がないので、ご本人の受給者証を見せてもらい、契約内容の記載を確認しました。すると、ある事業所が途中で契約時間を変更している形跡が見つかりました。経緯をまとめると次のとおりです。
- B事業所は朝の起床介助に週3回入っていたが、自社の都合で1回分入れなくなった
- うちもC事業所も代わりに入れず、その枠は訪問看護に対応してもらうことになった
- Bが減らした分の時間が余ったので、C事業所が引き受け、入浴を週1回から週2回に増やせた(もともと時間が足りず、入浴は週1回になっていました)
- 約半年後、B事業所が再び週3回入れるようになり、契約時間を元に戻して再契約した
- ところが、その時間はすでにC事業所に移っている。本来はCと調整して返してもらう必要があるのに、Bはどこにも相談せずに時間を戻していた
つまり、超過の3時間はB事業所の無断の時間戻しが原因でした。うちの請求には影響がないこと、相談員さんにも取り合ってもらえなかったことから、私はいったん様子を見ることにしました。
「今月減らして、来月請求してください」
しばらくして、相談員さんから連絡がありました。「その月の時間、余っていませんか?Bさんの時間が足りなくて…」。こちらで調べた経緯を伝えると、「Bさんの問題だったんですね。調整してみます」と電話は終わりました。
そして数日後、冒頭の電話です。
「その月の身体介護を減らして請求してもらえませんか。来月から入浴が週1回に戻って時間が余るので、減らした分は来月に請求してもらえれば」
頭の中が怒りでぐちゃぐちゃになりました。それでも気持ちを落ち着けて、丁重にお断りしました。理由は3つです。
- 原因はうちではない。 時間超過はB事業所の無断の再契約によるもので、うちの契約は最初から正しい
- やっていないサービスの請求になる。 実際に提供した月から別の月へ付け替えて請求するのは、記録と請求が一致しない不正請求です
- リスクを負うのはうちだけ。 発覚すれば、受け取った報酬の返還に加えて加算金が課されることがあり、悪質と判断されれば指定取消しもあり得ます。そのとき「相談員さんに頼まれた」は言い訳になりません
請求の責任は、請求した事業所が負います。誰に頼まれたとしても、実績と違う請求は絶対にしないでください。
LINE一本で朝の介助を休んだ事業所
実はB事業所には、以前にも驚かされたことがあります。担当ヘルパーが体調不良で、ご本人にLINEを1通送っただけで朝の介助を休んだのです。
Aさんはベッドの上ではスマホを見ることができません。その時間、ご家族はすでに仕事に出ています。それを分かっていれば、LINEだけでは誰にも届かないことは想像できたはずです。
朝の介助が来ないということは、Aさんは起き上がれないまま、次に誰かが来るまで待つしかないということです。これは「マナー」ではなく安全の問題です。
本来なら、次のような順で手を打つべきでした。
- 事業所内で代わりのヘルパーを探す
- 無理なら、ご家族に電話で直接連絡する
- あわせて相談員さんや他の事業所に、代わりに入れないか相談する
休むこと自体は誰にでもあります。問題は、休んだ後の連絡と調整を「本人へのLINE1通」で済ませてしまったことです。
個人を責めても、業界の質は上がらない
今回の件では、正直なところ「常識がない」と言いたくなる場面がいくつもありました。ただ、これは特定の誰かだけの問題ではないとも感じています。
介護・福祉の仕事は、社会になくてはならない尊い仕事です。一方で、体力的にも精神的にもきつく、給与水準も高いとは言えません。人が集まりにくく、十分な教育や経験を積む前に現場に立つ人も少なくありません。
だからこそ、「一人ひとりの常識」に頼るのではなく、仕組みで質を底上げする必要があると考えています。たとえば次のようなことです。
- 契約時間を変えるときのルール化。 複数事業所が入るケースでは、変更前に相談員と他事業所へ必ず共有する
- 相談支援専門員による支給量の確認。 各事業所の契約時間の合計が支給量に収まっているか、変更のたびにチェックする
- 欠勤時の連絡フローを文書にしておく。 誰に・どの順で・どの手段で連絡するかを事業所内で決め、研修で共有する
- 請求の基本を全員が知っておく。 「実績どおりにしか請求しない」を、管理者だけでなくヘルパーやサ責も理解しておく
こうした仕組みが業界全体で当たり前になれば、割を食う利用者さんは確実に減るはずです。
まとめ:同じお願いをされたら、迷わず断ってください
- 支給量を複数事業所で分け合うケースでは、1つの事業所の勝手な変更が全体の超過につながる
- 超過が見つかったら、まず受給者証と各事業所の契約内容を確認し、原因を相談員さんと共有する
- 「今月減らして来月請求して」は、実績と違う請求、つまり不正請求。誰に頼まれても応じない
- 請求の責任を負うのは、請求した事業所自身
相談員さんや他の事業所との関係を考えると、断りにくい場面もあると思います。それでも、事業所と利用者さんを守れるのは、最後は自分たちだけです。
同じような経験をした方がいたら、ぜひSNSで教えてください。