行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

運営・請求

1年目の棚卸し:自己点検で運営指導に備える

こんにちは、ぺーさんです。

「運営1年目シリーズ」は、今回が最終回の第8回です。開業から1年ほど経つと、日々の運営に慣れてくる一方で、「このやり方で本当に基準に合っているのか」という不安も出てきます。

今回は、1年目の棚卸しとして、自己点検の進め方を整理します。運営指導で指摘されやすい書類は運営指導でよく指摘される書類不備トップ5【障害福祉事業所向け】で、書類の整備は実地指導(運営指導)に向けた書類整備——開業直後から始める準備で書きました。今回は、それらを「自分の事業所で確かめる」ための方法と、2年目につなげる考え方です。

運営指導について、国のマニュアルで確認できること

厚生労働省は、令和8年6月に、障害福祉サービスの指導監査についての通知(令和8年6月8日付、障発0608第1号)、指導指針、集団指導・運営指導マニュアル、確認項目及び確認文書などを公表しています。私が確認できた範囲は、次のとおりです。

頻度

  • 就労継続支援A型・B型、共同生活援助は、3年に1回以上
  • その他のサービスは、3年に1回までは求めないが、原則として指定の有効期間内に少なくとも1回以上
  • 指定後まもない事業者は、指定後3年以内

居宅介護・重度訪問介護などの訪問系は「その他のサービス」にあたります。ただし、過去の指導内容や通報などで不適切な運営や報酬請求が疑われるときなどは、これとは別に実施されることがあります。介護保険の運営指導についても、国のマニュアルは、指定の有効期間内に少なくとも1回以上と定めています。

通知

原則として、実施予定日の1か月前までに通知されます。ただし、文書の改ざんや障害者虐待が疑われるときなど、やむを得ない場合は、事前通知なしで実施されることがあります。

確認の範囲

「確認項目及び確認文書」が公表されており、原則として、確認項目以外は確認せず、確認文書以外の提出も求めない、とされています。書類の確認は、原則として運営指導の前年度から直近の実績が対象で、利用者の記録の確認は、特に必要な場合を除き、原則として3名以内とされています。

自己点検

マニュアルには、基準等への適合について、事業者が自ら自己点検を行うことが推奨されるとあります。業務管理体制で届け出ている法令遵守責任者の指揮のもとで実施することが期待される、という記述もあります。

指摘があった場合

軽微なものは口頭指導、法令違反などは文書指導となり、文書指導では改善報告書の提出が求められるとされています。改善報告書には具体的な改善内容を書くことが求められ、「努力します」のような抽象的な表現は不可とされています。

なお、集団指導は年1回以上実施されるとされています。案内が来たら、資料に目を通して、自分の事業所の運営と照らし合わせてください。

自治体の自己点検シートの使い方

自治体は、サービスの種類ごとの自己点検シート(自己点検表)を公開していることが多くあります。私が確認した自治体の案内では、使い方は次のように書かれています。

  • 運営指導の実施通知が届いたら、該当するサービス種別のシートに記入して、実施日のおおむね7日前までに提出する(ある市)
  • 通知がなくても、少なくとも年1回は自己点検を行うよう求める(ある市)
  • 全項目について点検し、報告する(ある市。通知を受け取っていない事業所は義務ではなく推奨)

提出の要否や時期は、自治体で異なります。所轄の自治体のホームページで、自分のサービス種別のシートを確認してください。

ここからは、法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。

自己点検シートは、「はい」に丸をつけるだけでは意味が薄いと考えます。次の手順で使うと、運営指導の準備にもなります。

  1. サービス種別ごとのシートを入手し、担当者を決める(管理者とサービス提供責任者の2人で行う)
  2. 各項目に、「根拠となる書類がどこにあるか」を書き込む
  3. 「いいえ」「一部」の項目は、いつまでに誰が直すかを決める
  4. 点検した日付と実施者を残しておく

点検の観点

確認項目には、次のような大分類があります。1年目の棚卸しでは、この順に見ていくと抜けが少なくなります。

観点 見るところ
人員 管理者、サービス提供責任者、従業者の員数と資格、勤務実績
運営 運営規程、重要事項説明書、契約書、苦情・事故の対応、秘密保持、広告
記録 サービス提供記録、計画、モニタリング、利用者への確認
加算・請求 体制届の内容と実態の一致、算定の根拠となる記録
虐待防止 委員会の定期開催、従業者への研修、担当者の配置(基準第40条の2)
身体拘束等 禁止、やむを得ない場合の記録、適正化の委員会・指針・研修(第35条の2)
BCP 感染症・非常災害の計画、周知・研修・訓練、定期的な見直し(第33条の2)

1年目の振り返りシート(仮想の例)

次の表は、仮想の例です。自己点検の結果を、2年目の課題につなげるために使います。

観点 点検の結果 根拠書類の所在 2年目の課題 担当・期限
人員 〇 勤務表・資格証の写し(事務所書庫) 資格証の有効期限管理表を作る 管理者・3月末
運営 △ 重要事項説明書(改定日が古い) 運営規程と重要事項説明書の整合を確認し改定 管理者・1月末
記録 △ サービス提供記録 記録の確認日をそろえる仕組みを作る サ責・毎月
加算・請求 〇 体制届の控え 算定要件の記録を月次で確認 事務・毎月
虐待防止 △ 研修の記録 年間の研修予定を立てる 管理者・12月
BCP × 計画は作成済み 訓練を実施し、記録を残す 管理者・2月

「〇・△・×」に加えて、「根拠書類の所在」の列があることが大切です。いざ書類の提出を求められたときに、すぐに出せる状態かどうかが分かるためです。

2年目の課題の立て方

課題は、多く挙げるほど実行されなくなります。私は、次の3つの考え方で絞ることをおすすめします。

  1. 法令・基準に関わることを最優先にする:「×」は、他の課題より先に直す
  2. 数を絞る:2年目の課題は3〜5つにして、「誰が・いつまでに・どこまで」を書く
  3. 四半期ごとに見直す:3か月に一度、振り返りシートを開いて進み具合を確認する

法令に関わる課題を片づけたあとに、収支や利用者獲得などの成長に関する課題を置くと、順番を間違えにくくなります。

まず今日やること3つ

  1. 所轄の自治体のホームページで、自分のサービス種別の自己点検シートを探して、ダウンロードする
  2. 「×」がつきそうな項目(研修、訓練、運営規程の整合など)を、先に3つ書き出す
  3. 振り返りシートを作り、点検の予定日を決める

まとめ

この連載では、カレンダー、請求、記録、計画、社会保険・労働保険、利用者獲得、収支、そして今回の自己点検と、1年目の運営の柱を一つずつ見てきました。どれも、日々の積み重ねを「仕組み」にしておくことが、運営指導への一番の備えになると考えます。

これで「運営1年目シリーズ」は終わりです。引き続き毎週火曜に運営の実務を書いていきます。

本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。

参考にした資料

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