行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

運営・請求

利用者が増えない…相談支援事業所・ケアマネジャーとの関係づくりと、やってはいけないこと

こんにちは、ぺーさんです。

「運営1年目シリーズ」の第6回です。指定を受けて開業したものの、「問い合わせが来ない」「紹介が入らない」という悩みは、1年目の事業所のほとんどが通る道だと思います。

今回は、利用者を増やすために何をするか、そして、何をしてはいけないかを、運営基準の条文で確認できた範囲でまとめます。焦って踏み外しやすいのは、後者の「やってはいけないこと」のほうです。

開業したばかりの頃の様子は、【訪問介護開業記】開業~3か月目——最初の利用者さんたちにも書いています。

利用者はどこから来るのか

障害福祉サービスの場合、利用者は、相談支援専門員が作成するサービス等利用計画(セルフプランの場合は本人や家族が作成)にもとづいて事業所を選びます。介護保険の訪問介護では、ケアマネジャーが居宅サービス計画の中で事業所を位置づけます。つまり、事業所への紹介は、相談支援専門員やケアマネジャーを通って入ってくることが多くなります。

そして、この人たちには、法令で公正中立であることが求められています。

  • 計画相談支援の基準には、福祉サービスが「特定の種類又は特定の障害福祉サービス事業を行う者に不当に偏ることのないよう、公正中立に行われなければならない」とあります(第2条第4項)。
  • 居宅介護支援の基準にも、居宅サービスが特定の種類や特定の事業者に不当に偏らないよう、公正中立に行うことが定められています(第1条の2第3項)。また、利用者が複数の事業者の紹介を求められることを、あらかじめ説明する義務もあります(第4条第2項)。

私たち事業者にできるのは、紹介の候補に入り、信頼を積み重ねることです。

法令で禁止されていること

関係づくりの前に、一線を確認しておきます。

利益供与等の禁止

障害福祉サービスの運営基準(指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準)の第38条は、「利益供与等の禁止」を定めています。厚生労働省の解釈通知の記述によると、次の内容です。

  • 居宅介護事業者は、相談支援事業者や他の障害福祉サービス事業者に対し、利用者を紹介することの対償として、金品その他の財産上の利益を供与してはならない(第1項)
  • 同じく、紹介の対償として、これらの事業者から金品その他の財産上の利益を収受してはならない(第2項)

重度訪問介護、同行援護、行動援護には、第43条により準用されています。介護保険の訪問介護にも同様の規定があり、指定訪問介護事業者は、居宅介護支援事業者またはその従業者に対し、利用者に特定の事業者のサービスを利用させることの対償として、金品その他の財産上の利益を供与してはならないとされています(指定居宅サービス等の基準第35条)。

受け取る側にも禁止があります。居宅介護支援事業者とその従業者は、居宅サービス事業者から金品その他の財産上の利益を収受してはならず(居宅介護支援の基準第25条第3項)、指定特定相談支援事業者とその従業者にも同じ規定があります(計画相談支援の基準第26条第3項)。

つまり、事業者が「紹介料」を渡す側にも、受け取る側にもなってはいけません。ある市の通知では、就労系サービスに関する例として、利用者が友人を紹介したときの金品の授与や、利用開始時の祝い金が挙がっています。改善命令に従わない場合は行政処分を行うことがあるとされています。

なお、移動支援は地域生活支援事業で、市町村の要綱にもとづいて実施されます。要綱の内容は自治体で異なりますから、所轄の市町村に確認してください。

誇大広告

居宅介護の運営基準には、「情報の提供等」(第37条)があります。運営指導の確認項目でも、事業の内容に関する情報提供を行うよう努めているか、広告をしている場合にその内容が虚偽または誇大でないかが挙がっています。重度訪問介護は第43条第1項で準用されます。

このほか、景品表示法があります。消費者庁の資料では、実際より著しく優良であると示す表示(優良誤認)や、取引条件が著しく有利だと誤認される表示(有利誤認)が、不当表示にあたるとされています。「地域で一番」「必ず対応します」といった表現は、根拠が示せないなら避けたほうが安全です。

提供拒否の禁止

訪問介護の基準では、正当な理由なく提供を拒んではならないとされています(第9条)。居宅介護の運営基準でも同様の規定があり(第11条)、解釈通知は、次のような場合を正当な理由の例に挙げています。

  • 事業所の現員からは利用申込みに応じきれない
  • 利用申込者の居住地が、通常の事業の実施地域外
  • 運営規程で主たる対象とする障害の種類を定めていて、これに該当しない、その他自ら適切なサービスを提供することが困難
  • 入院治療が必要

提供が困難なときは、他の事業者の紹介など必要な措置を速やかに講じることとされています(居宅介護の基準第13条)。

実務のポイント

ここからは、法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。

顔と情報を届ける

いきなり訪問営業をするより、まず「事業所案内」を1枚作ります。仮想の例ですが、次のような項目です。

項目 書く内容の例
提供サービス 居宅介護、重度訪問介護、移動支援など、実際に指定を受けているもの
対応できる時間帯・地域 曜日、時間帯、通常の事業の実施地域
対応できる支援 身体介護、家事援助、通院など、実績のあるもの
苦手なこと・難しいこと 対応できない時間帯や、体制が整っていない支援
空き状況 「〇月は平日午前に空きあり」など
連絡先 電話・FAX・メール、担当者、連絡がつく時間

「できないこと」も書いておくと、紹介する側が助かります。地域の相談支援事業所やケアマネジャー、基幹相談支援センター、地域包括支援センター、市区町村の窓口などに、この案内を持って挨拶に行きます。

空き状況は正直に、こまめに

空き状況は、頻度を決めて更新します。空きがないのに「大丈夫です」と答えるより、「今月は難しいが、来月なら」と正直に伝えるほうが、信頼につながると考えます。

依頼には、その日のうちに返事をする

可否がすぐ決まらなくても、「確認して〇時までに折り返します」と一報を入れます。

断るときの型

断る場合は、次の順で対応します。

  1. 断る理由が、上の「正当な理由」に当たるかを確認する
  2. できるだけ早く、理由を具体的に伝える(人員が足りない、時間帯が合わない、など)
  3. 他の事業所の情報提供など、できる範囲の代替案を出す(対価は受け取らない)
  4. 依頼の日時、内容、断った理由を記録に残す

受けたあとの報告が、次の紹介になる

サービスが始まったら、状況を相談支援専門員やケアマネジャーに報告します。訪問介護の基準では、居宅介護支援事業者などとの密接な連携に努めること、サービス終了時に居宅介護支援事業者へ情報を提供することとされています(第14条)。モニタリングやサービス担当者会議での丁寧な報告が、紹介元の安心につながります。

やってはいけないことのチェック

  • 紹介してくれた事業所や担当者に、金銭・商品券・物品を渡していないか
  • 紹介の見返りとして、利用者や他事業所から金品を受け取っていないか
  • 利用者やその紹介者に、「祝い金」などを渡す仕組みがないか
  • チラシやホームページに、根拠のない「一番」「必ず」「日本一」などの表現がないか
  • 依頼を断るとき、正当な理由の確認と記録を行っているか

挨拶の品が金品に当たるかどうかは、確認できた資料では線引きが分かりませんでした。所轄の自治体に確認し、それまでは渡さない、受け取らないと決めておくのが安全だと考えます。

まず今日やること3つ

  1. 事業所案内を1枚作る(できないことと空き状況も書く)
  2. 地域の相談支援事業所・ケアマネジャーの事業所を10か所、リストアップし、挨拶の予定を入れる
  3. 紹介元への金品の授受や広告表現を、上のチェックで点検する

まとめ

利用者を増やす近道はありませんが、正直な情報提供、素早い返事、丁寧な報告を積み重ねることが、結局は紹介につながると考えます。そのうえで、金品のやりとりや誇大な広告には手を出さないことです。次回、第7回は「月次収支の見方」を取り上げます。

本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。

参考にした資料