訪問したら利用者が倒れていた・様子がおかしいとき:救急要請の初動と連絡の順番、事後の記録
こんにちは、ぺーさんです。
「こんなときどうする?シリーズ」の第4回は、訪問したら利用者さんが倒れていた、あるいは様子がおかしいときです。
前回は金銭・貴重品の預かりを頼まれたときでした。今回は、判断に時間をかけられない場面です。だからこそ、現場で迷わないための「順番」を、事前に事業所で決めておきたいテーマです。
なお、応急手当の手順は、消防などの公的機関が講習で教えている内容が基本です。この記事は手順を細かく書くものではなく、全体の流れの整理にとどめます。実技は、必ず講習でご確認ください。
場面(仮想の例です)
たとえば、次のような場面です。実際にあった話ではなく、説明のための仮想の例です。
訪問して声をかけても返事がなく、合鍵で入ると、居室の床に利用者さんが倒れています。呼びかけても反応が弱く、呼吸の様子もはっきり分かりません。ご家族は不在で、頭が真っ白になります。
結論:迷ったら、まず救急要請。連絡は「救急→管理者→家族・ケアマネ」の順
私は次の3つを基本に考えます。ここは法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。
- 反応と呼吸の様子を確認し、反応がない・呼吸がおかしい・判断に迷うときは、ためらわずに119番通報する
- 救急隊が来るまでの間、通報先の指示や、受講した講習の内容に沿って、できる範囲の応急手当をする
- 救急要請のあと、管理者(サ責)へ連絡し、管理者が家族・ケアマネジャー・主治医などに連絡する
根拠:公的資料で確認できたこと
倒れている人を見たときの流れ(消防の資料)
東京消防庁の資料では、倒れている人を見たときの一般的な流れは、おおむね次のとおりです。
- 肩を軽くたたきながら大声で呼びかけ、反応を確認する
- 反応がない、または判断に迷う場合は、大声で助けを呼び、119番通報とAEDの手配を依頼する
- 胸と腹部の動きを見て、10秒以内で、普段どおりの呼吸をしているかを確認する
- 普段どおりの呼吸がない、または判断に迷う場合は、直ちに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を始める
- AEDが届いたら、電源を入れ、音声の指示に従う
- 救急隊に引き継ぐ
胸骨圧迫の位置・深さ・テンポなどの細かい手順は、講習で実技として身につけるものですので、ここでは省きます。
消防庁の資料では、令和2年のJRC蘇生ガイドラインの改訂で、「判断に迷う場合も心停止とみなして胸骨圧迫を開始する」ことが明記されたと紹介されています。また、JRC蘇生ガイドラインは2025年にも改訂されています。講習の内容も更新されていくため、最新の講習で確認してください。
119番の通報
消防庁の資料によると、119番では、指令員が、住所、通報している人の名前と連絡先などを順に聞き取ります。緊急性が高い場合は、すべてを聞き終わる前に救急車が出動する、とされています。住所が分からないときは、近くの大きな建物や交差点などの目印を伝えます。
AEDと、ヘルパーができる範囲
AEDの使用は医行為にあたりますが、厚生労働省の通知(平成16年7月1日 医政発第0701001号)では、救命の現場に居合わせた一般市民が使うことは、反復継続性が認められず、医師法違反にはならないとされています。応急手当やAEDは、講習を受けたうえで、居合わせた人として行うもの、と整理して考えるのがよいと私は思います。
判断に迷う場合の相談先として、消防庁が進める救急安心センター事業(#7119)があります。医師・看護師・救急救命士が電話で助言してくれる仕組みで、緊急性が高い場合は119番につなぐこともあるとされています。ただし、実施している地域は限られます(全国41地域と案内されています)。意識がない、呼吸がおかしいといった場面では、相談ではなく、119番を優先するのが私の考えです。
運営基準:緊急時と事故発生時
介護保険の訪問介護では、基準第27条で、サービス提供中に利用者の病状が急変した場合などは、速やかに主治の医師へ連絡するなど必要な措置を講じることとされています。基準第37条では、事故が発生した場合、市町村、利用者の家族、居宅介護支援事業者等に連絡し、必要な措置を講じ、状況と採った処置を記録することとされています。賠償すべき事故は、損害賠償を速やかに行います。障害福祉サービスにも、同様の緊急時等の対応と事故発生時の対応の定めがあります。
基準の文言では、主治医への連絡と119番の優先順位は示されていません。運営規程に定めた緊急時の対応方法にもとづくことになりますので、順番を事前に決めておくことが大切です。
なお、訪問したら倒れていた場合が「サービスの提供により発生した事故」にあたるか、市町村への報告が必要かどうかは、自治体で扱いが異なることがあります。所轄の自治体の案内をご確認ください。報告の様式や期限は、ヒヤリハットが出てくる職場づくりも参考にしてください。
現場での動き方
初動の目安(私の考えです)
| 順番 | することの目安 |
|---|---|
| 1 | 自分の安全を確認し、反応・呼吸を確認する |
| 2 | 反応なし、呼吸なし、判断に迷う → 119番(スピーカーにして両手を空ける)。周囲に人がいれば、AEDの手配を頼む |
| 3 | 救急隊の指示、講習の内容に沿って応急手当をする |
| 4 | 救急隊が来るまでに、利用者情報(氏名、年齢、持病、服薬、主治医、家族の連絡先)を用意する |
| 5 | 救急要請のあと、できるだけ早く管理者へ一報を入れる。救急隊へ引き継いだら、経過を管理者に報告する |
倒れているのが亡くなった状態に見えても、その判断はヘルパーがするものではありません。救急要請をして、指示に従ってください。
また、利用者さんやご家族が、延命に関する希望を話されている場合の対応は、事前に主治医・ケアマネジャーと、事業所内で確認しておく必要があります。その場で個人が判断するのではなく、確認済みの内容にしたがって動けるようにしておきます。
連絡の順番の考え方
| 順番 | 連絡先 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 1 | 119番 | 救急要請 |
| 2 | 管理者・サ責 | 状況共有、以降の連絡の指示、駆けつけや同行の判断 |
| 3 | ご家族 | 状況と搬送先の伝達(管理者が行う場合もあり) |
| 4 | ケアマネジャー・相談支援専門員、主治医 | 状況共有、今後の対応 |
| 5 | 市町村 | 報告が必要な場合。要否と期限は所轄に確認 |
記録
事実だけを、時系列で書きます。訪問の時刻、発見時の状態(体位、反応、呼吸、周囲の様子)、119番の通報時刻、実施した応急手当、救急隊の到着・出発時刻、搬送先、連絡した相手と時刻、家族への説明内容です。推測や感想は、事実と分けて書きます。
事業所として整えておくこと
- 緊急時の連絡先と順番(救急→管理者→家族・ケアマネ→主治医)を、運営規程やマニュアルに明記する
- 利用者ごとの緊急連絡カード(持病、服薬、主治医、家族の連絡先、延命に関する確認事項)を、すぐ取り出せる場所に置く
- 全ヘルパーが、消防などの応急手当・AEDの講習を受講する機会をつくる(受講日は管理表にも記録する)
- 発見時の記録様式と、事故報告様式を用意する
- 事後の振り返りを行う。時系列で対応を確認し、迷った点、連絡の遅れ、記録の不足を洗い出す。責任の追及ではなく、次に生かすための場にする
- 発見したヘルパーの心の負担にも配慮し、管理者が話を聞く時間をつくる
まず今日からできること3つ
- 事業所の緊急時の連絡順を確認し、1枚にまとめて全員に配る
- 全ヘルパーの、応急手当・AED講習の受講状況を確認する
- 担当利用者の緊急連絡先と、主治医の連絡先を、すぐ見られる状態にする
まとめ
倒れている利用者さんを前にしたとき、現場で判断できることには限りがあります。だからこそ、「迷ったら119番」「連絡は救急が先」「記録は事実だけ」という順番を、事前に決めて共有しておくことが、利用者さんとヘルパーの両方を守ると考えています。次回は第5回「訪問したら利用者が不在のとき」を取り上げます。
本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。