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加算・処遇改善

処遇改善加算の賃金改善——配分ルールと役員除外の考え方

これまでの記事では、処遇改善加算の取得タイミングと、キャリアパス表・研修計画表という土台となる書類について取り上げました。加算の指定を受け、書類も整ったとしても、もうひとつ避けて通れないのが「受け取った加算額を、誰にどう配分するか」という賃金改善の実務です。今回は、配分ルールの基本と、事業所からの相談で特に多い「役員は対象になるのか」という論点を整理します。

賃金改善は「上乗せ」が原則

処遇改善加算は、事業所の収入を増やすための加算ではなく、職員の賃金を改善するための加算です。そのため、加算として受け取った額は、既存の給与水準に上乗せする形で職員の賃金改善に充てる必要があります。基本給への反映、手当の新設・増額、賞与への上乗せなど、反映のさせ方には一定の裁量がありますが、「加算を受け取ったのに、実質的な賃金水準が変わっていない」という状態は認められません。

賃金改善の計画は、事業所ごとに作成する賃金改善計画書(処遇改善計画書の一部)に記載し、年度終了後には実績報告書で実際の改善内容を報告します。計画と実績の間に大きな乖離があると、翌年度以降の加算算定や運営指導の場面で説明を求められることになるため、「計画通りに配分できているか」を年度の途中でも確認しておくことをおすすめします。

配分対象となる職種の範囲

処遇改善加算の配分対象は、原則としてサービス提供に従事する職員全体です。事業所は、加算の趣旨を踏まえたうえで、どの職種に・どの程度配分するかを一定の裁量で決めることができます。実務でよく相談を受けるのは、直接支援を行うヘルパーや生活支援員だけでなく、サービス提供責任者、管理者、さらには事務職員や送迎ドライバーなど、直接的な支援業務以外に携わる職員をどう扱うかという点です。

配分ルールを設計する際は、「誰にいくら配分するか」を場当たり的に決めるのではなく、経験年数や職責、保有資格などに応じた一定の基準を設け、その基準を賃金改善計画書や就業規則・賃金規程に明記しておくことが望ましいとされています。基準があいまいなまま運用していると、実績報告の際に配分の妥当性を説明しづらくなります。

役員は配分対象になるのか

事業所からの相談で特に多いのが「代表者や役員にも配分できるのか」という質問です。基本的な整理としては、役員としての職務に対する報酬(役員報酬)は、処遇改善加算による賃金改善の対象にはなりません。処遇改善加算はあくまで「職員」の賃金改善を目的とした加算であり、経営に携わる役員の報酬を引き上げるための原資ではない、という位置づけです。

一方で、法人の役員であっても、実際に現場でヘルパーやサービス提供責任者として勤務し、労働の対価として給与(役員報酬とは別建ての給与)を受け取っている場合には、その労働者としての立場に対応する部分は配分対象になり得ると整理されています。ポイントは「役員という肩書きそのもの」ではなく、「実際にどのような業務を、労働者としての立場でどれだけ行っているか」です。小規模な事業所ほど、代表者自身が現場に出ているケースは珍しくないため、この線引きを曖昧にしないことが重要です。

配分の可否に迷うケースでは、役員としての報酬部分と、現場労働の対価としての給与部分を、雇用契約や賃金台帳の上でも区別できる形にしておくと、実績報告の際の説明がしやすくなります。

配分方法をどう設計するか

配分方法には、大きく分けて「全職員に一律で配分する方法」と「経験・技能や職責に応じて傾斜をつけて配分する方法」があります。どちらを採用するかは事業所の裁量ですが、令和6年度以降の制度では、経験・技能のある職員に重点的に配分する考え方が制度上も推奨される方向にあります。開業直後で職員数が少ない事業所では、一律配分のほうが運用しやすい面もありますが、将来的に職員が増えてきた段階で傾斜配分に移行することも見据え、早い段階から「どのような基準で差をつけるか」を考えておくと、後々の制度変更にも対応しやすくなります。

いずれの方法を採る場合も、配分ルールは職員に周知し、賃金改善計画書の内容と実際の給与明細・賃金台帳の記載が整合していることが大切です。

まとめ——賃金改善の配分で押さえる3点

  • 処遇改善加算は既存の賃金水準への「上乗せ」が原則で、配分ルールは賃金改善計画書や賃金規程に明記しておく
  • 役員報酬そのものは配分対象外だが、役員が労働者として現場に出ている場合の給与部分は対象になり得るため、報酬と給与を区別しておく
  • 配分方法(一律/傾斜)は事業所の裁量だが、経験・技能に応じた傾斜配分が制度上も推奨される方向にあることを踏まえて設計する

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本記事は一般的な情報を整理したものであり、処遇改善加算の配分ルール・役員の扱いに関する具体的な取り扱いは、加算区分や自治体の運用によって異なる場合があります。実際の賃金改善計画の作成にあたっては、社会保険労務士など専門家にご確認ください。