行政書士・社会福祉士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

現場の管理

スタッフの離職を防ぐ、面談のしかた:3つの場面別に、進め方と面談シートの例を整理

こんにちは、ぺーさんです。

日曜はマネジメントの話をしています。「マネジメントシリーズ」の第7回は、スタッフの離職を防ぐための「面談」です。

人が辞めるときは、たいてい突然に見えます。けれど、振り返ると「あのとき話を聞いておけば」と思う場面がいくつも出てくるものです。忙しい現場で、面談の時間をどう確保し、何を聞き、どう残すか。制度やデータを確認したうえで、私の考えを整理します。

介護の離職は、何が理由になっているか

公益財団法人介護労働安定センターの「令和7年度介護労働実態調査」(令和8年7月29日公表)から、確認できた数値を挙げます。

  • 離職率(令和6年10月1日時点の在籍者数を基準としたもの)は、訪問介護員と介護職員の2職種計で12.4%。訪問介護員は11.6%、介護職員は12.7%でした
  • 現在の仕事の悩み・不安・不満の上位は、「人手が足りない」52.3%、「仕事内容のわりに賃金が低い」38.1%、「昇給がない、少ない」29.9%でした
  • 直前の仕事が介護関係だった人に「前の職場を辞めた理由」を聞いたところ(n=6,163)、上位は「職場の人間関係に問題があったため」27.3%、「勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため」21.0%、「他に良い仕事・職場があったため」17.2%でした

注意したいのは、「前職を辞めた理由」は、いま介護の仕事をしている人が過去の職場について答えたものだという点です。自分の事業所を辞めた人の理由そのものではありません。それでも、人間関係や運営への不満が上位に来ていることは、面談で扱うテーマを考えるヒントになります。

また同じ調査では、事業所が実施している定着の方策として、「有給休暇等の各種休暇の取得や勤務日時の変更をしやすい職場づくり」が75.4%、「人間関係が良好な職場づくり」が74.2%と、上位に挙がっています。

制度との関係:処遇改善加算の職場環境等要件

介護職員等処遇改善加算には、「職場環境等要件」があります。厚生労働省の資料では、要件は「入職促進」「資質の向上やキャリアアップ」「両立支援・多様な働き方」「心身の健康管理」「生産性向上」「やりがい・働きがい」といった区分に分かれています。区分ごとに、加算の種類に応じた数の取組を行うことが求められます。

面談に近い取組として、令和7年度以降の一覧には次のような項目があります(要旨です)。

  • 上位者や担当者によるキャリア面談など、キャリアアップや働き方に関する定期的な相談の機会の確保
  • エルダー・メンター(仕事やメンタル面をサポートする担当者)制度などの導入
  • 業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等についての職員相談窓口の設置など、相談体制の充実
  • ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化と、職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善

なお、介護労働安定センターの令和8年度分の解説資料では、区分そのものは令和7年度から変わっていないと確認できました。一方で、令和8年度には取組を令和8年度中に行うことを誓約する特例など、扱いの変更もあります。取組数や誓約の扱いは、加算の区分や自治体の運用にも関わるため、必ず最新の資料と自治体の案内でご確認ください。障害福祉サービスの処遇改善加算にも職場環境等要件があります(区分と取組数の考え方は介護保険と似ていますが、内容は別に確認が必要です)。

ここまでが、確認できた制度の内容です。面談を「しなければならない」と定めた条文を、私は今回の調査では確認できていません。あくまで、取組の選択肢の一つとして挙げられているものです。

面談の進め方(実務のポイント)

以下は法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。

面談は3つの場面に分けて考える

種類 いつ ねらい
入職後の面談 入職後、初期の数週間〜数か月のうちに数回 不安や「思っていたのと違う」を早めに拾う
定期面談 年1〜2回、または半年ごとなど、事業所で決めた間隔 働き方の希望、負担、成長の見通しを確認する
退職の兆しがあるときの面談 変化に気づいたとき、随時 事情を聞き、できることと難しいことを整理する

退職の兆しとして、たとえば次のような変化があります(あくまで一般的な例です)。

  • 遅刻や欠勤、直前の連絡が増えた
  • 口数が減った、会議や連絡ノートへの反応が薄くなった
  • シフトの希望が急に減った、または増えた
  • 同僚や利用者さんへの言葉が強くなった

兆しは「辞めるサイン」と決めつけるものではなく、声をかけるきっかけです。

聞くこと・話すこと・記録すること

  • 聞くこと:仕事の負担、人間関係、働き方の希望(曜日・時間・件数)、今後やってみたいこと。まず本人の話を先に聞きます
  • 話すこと:事業所として決まっていること、できること、検討に時間がかかること。できない約束はしない、決まっていないことを決まったように話さない、が大切だと考えています
  • 記録すること:日付、参加者、聞いた内容、事業所としての対応、次に確認する日。事実と本人の言葉を分けて書き、評価や憶測は混ぜません

面談の記録は個人情報を含みます。保管場所と閲覧できる人の範囲を決めておきます。

聞き方の例

  • 「今の仕事で、いちばん負担に感じていることは何ですか」
  • 「訪問の組み方や時間帯で、変えられたら助かることはありますか」
  • 「事業所のことで、話しにくいと感じていることはありますか」
  • 「困ったとき、誰に相談しやすいですか。相談しにくいとしたら、何が理由でしょう」
  • (退職の意向が出たとき)「そう考えるようになった経緯を、聞かせてもらえますか」

「なぜ」を重ねると責められている印象になりやすいので、「どんな場面で」「いつごろから」のように、状況を尋ねる形にしています。

面談シートの例(仮想)

たとえば、次のような1枚のシートを用意しておくと、記録のばらつきが減ります。以下は仮想の例です。

項目 確認すること 記入例(仮想)
日時・参加者 実施日、同席者 〇月〇日、本人・管理者
仕事の負担 件数、移動、時間帯、身体的な負担 午前に訪問が集中し、移動が慌ただしいとの話
人間関係 相談できる相手、連携の困りごと 連絡ノートの書き方で迷うことがある
働き方の希望 曜日、時間、件数、休みの取り方 来月から週の勤務日を1日減らしたい希望
今後の希望 研修、資格、やってみたい業務 研修に興味あり
事業所からの回答 対応できること、検討すること 訪問の時間帯の組み替えを検討し、〇日までに返答
次回確認 次の面談日、確認する項目 1か月後に負担感を再確認

「事業所からの回答」と「次回確認」の欄が、いちばん大切です。聞いただけで終わると、話した側は「言っても変わらない」と感じやすいためです。

今日からできること:まずやる3つ

  1. 全スタッフについて、最後にゆっくり話した日を確認し、間が空いている人から順に、短い面談の日程を入れる
  2. 上のシートを参考に、自事業所の面談シートを1枚作る。項目は多くしすぎない
  3. 面談で出た困りごとについて、「いつまでに誰が何をするか」を決めて、次回に結果を伝える

時間が取れないときは、10〜15分の短い面談を、訪問の前後に組み込むだけでも違うと考えています。

まとめ

離職の理由には賃金や人手不足もありますが、調査では人間関係や運営への不満も上位に挙がっています。面談は、それを早めに知るための手段です。処遇改善加算の職場環境等要件にも、キャリア面談や相談体制、ミーティングなどが取組として並んでいます。加算のためだけでなく、事業所の仕組みとして続けられる形を作ることが大切です。

次回の第8回は、「パート・登録ヘルパーとの関わり方とミーティング」を取り上げます。

本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。

参考にした資料

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