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家族の暴言や脅しで利用契約を解除できる? カスハラを理由とした即時解除を認めた東京地裁

こんにちは、ぺーさんです。

2026年10月1日から、事業主にカスタマーハラスメント(カスハラ)対策が義務づけられています。介護・障害福祉の現場でも、利用者さんやご家族からの暴言や無理な要求に悩んでいる事業所さんは少なくありません。

今回の「判例シリーズ」第7回は、利用者のご家族による暴言や脅しを理由に、施設が利用契約を解除したことが有効と認められた裁判例です。有料老人ホームの事案ですが、訪問介護や障害福祉サービスにも参考になります。

事案の概要

東京地方裁判所の令和3年7月8日判決です(平成31年(ワ)第1474号)。

  • 施設の利用者は、認知症の高齢女性でした
  • 利用者の子(被告)が、施設の職員に対して、繰り返し暴言を浴びせたり、容姿をばかにしたりしました
  • 「刑事裁判を起こす」「職員を個人名で訴える」などの脅しもありました
  • さらに、経管栄養の変更を求める、医師の往診をキャンセルさせようとするなど、医療に関する判断にも介入しました
  • 施設長は、書面で9回以上、言動を改めるよう求めましたが改善されず、施設は利用契約を即時解除しました
  • 被告は解除の効力を争い、退去を拒みました。その後、利用者さんが入院したことで退去は完了しました

その後、施設側は、解除後の利用料などをめぐって被告に請求しました。

裁判所の判断

① 契約の即時解除は有効 裁判所は、施設の詳細な記録と、9回にわたる警告の書面が信用できるとして、被告の言動をほぼ認定しました。そして、契約書にある「他の利用者の生活に著しく悪影響を及ぼす言動」などの解除事由に当たるとし、即時解除は有効だと判断しました。

② 解除後の利用料を2倍とする規定も有効 契約に「解除後、居室を明け渡すまでの利用料を2倍とする」という規定がありました。裁判所は、これは居室の明け渡しを円滑にし、解除後の損害を補うためのものだとして、消費者契約法10条に反しないと判断しました。賠償の予定額としても、過度に高額とはいえないと評価されています。

結論として、施設側の請求が認められました。

この判決から読み取れること

以下は判決そのものではなく、私の実務経験にもとづく考えです。

1. 勝負を分けたのは「記録」と「書面での警告」 裁判所が事実を認めた根拠は、施設の詳しい記録と、9回の書面でした。口頭で注意しただけでは、後から「言った・言わない」になります。日時、内容、相手の発言、職員の対応を、その日のうちに記録することが大切です。

2. 契約書に「解除できる場合」が書いてあった 今回、契約書に解除事由が具体的に書かれていたことが、判断の前提になりました。訪問介護や障害福祉サービスの契約書・重要事項説明書にも、職員への暴力・暴言・ハラスメントがあった場合の対応(サービスの中止や契約の解除)を明記しておくことをおすすめします。

3. すぐに解除するのではなく、段階を踏んでいる 施設長は、9回以上も書面で改善を求めています。いきなり解除するのではなく、段階的に警告し、改善の機会を与えたことも、有効と判断された理由の一つと考えられます。

4. 一人の職員に抱え込ませない 暴言や脅しを受けた職員は、心身に大きな負担を受けます。担当者だけでなく、管理者が窓口になる、複数人で対応するなど、組織として対応する体制が必要です。カスハラ対策の義務化でも、相談体制の整備などが求められます。

事業所が今日からできること

  • カスハラの定義と、対応の流れ(記録→管理者へ報告→書面で警告→サービス中止・解除)を社内で決める
  • 契約書と重要事項説明書に、ハラスメントを理由とするサービス中止・解除の条項を入れる
  • 職員が相談できる窓口を決め、被害を受けた職員のケアを行う
  • 対応が難しいケースは、早めに弁護士や自治体に相談する

まとめ

カスハラへの対応は、「我慢する」のでも「感情的に断る」のでもなく、記録と書面、契約書という根拠をそろえて、手順どおりに進めることが大切です。義務化を機会に、事業所のルールを見直してみてください。

本記事は、公開されている判例解説などをもとに事案を整理した一般的な情報提供です。判決原文のすべてを確認したものではなく、個別の事案については弁護士などの専門家にご相談ください。

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