行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

運営・請求

開業1年目の社会保険・労働保険:年度更新・算定基礎届など毎年の手続き

こんにちは、ぺーさんです。

「運営1年目シリーズ」の第5回です。これまでの回では、カレンダー、請求、記録、計画といった日々の運営の軸を取り上げてきました。今回は、事業所の規模にかかわらず「毎年やってくる」社会保険・労働保険の手続きです。

指定申請のときの加入手続きは、指定申請と同時に必要な届出——社会保険・労働保険のタイミングで、雇い入れ時の契約や健康診断はスタッフを雇う前の労務手続き——契約・健康診断・就業規則で書きました。今回はその続きにあたる、開業後に繰り返す手続きの話です。

なお、社会保険・労働保険の手続きの代行や個別の相談は、社会保険労務士(社労士)の業務です。この記事は一般的な制度の流れの説明にとどめます。詳細は、社労士や年金事務所、労働局に確認してください。

毎年・随時の手続きの全体像

公的資料で確認できた内容を、表にまとめます。日付は令和8年度(2026年度)のものです。

手続き 時期 内容(確認できたこと)
労働保険の年度更新 令和8年度は6月1日〜7月10日 前年度の確定保険料と、当年度の概算保険料をあわせて申告・納付する
算定基礎届(定時決定) 毎年7月1日〜7月10日 4〜6月の報酬をもとに、社会保険料のもとになる標準報酬月額を決め直す
月額変更届(随時改定) 要件に当てはまったとき、速やかに 固定的賃金の変動などにより、標準報酬月額を途中で改定する
賞与支払届 賞与を支払った日から5日以内 年3回以下の賞与が対象
社会保険の資格取得届・喪失届 事実の発生から5日以内 入社・退職などのたびに提出する
雇用保険の資格取得届 被保険者となった月の翌月10日まで 入社のたびに、ハローワークへ提出する
雇用保険の資格喪失届・離職証明書 離職の翌日から10日以内 退職のたびに、ハローワークへ提出する

労働保険の年度更新

労働保険(労災保険・雇用保険)は、年度ごとに保険料を精算します。前年度(4月〜3月)に実際に支払った賃金の総額から確定保険料を計算し、すでに納めた概算保険料との差を精算します。同時に、当年度の概算保険料も申告・納付します。

令和8年度の申告・納付期間は6月1日から7月10日までです。厚生労働省の案内では、郵送のほか電子申請でも申告できます。また、電子申請が義務付けられている法人は、令和8年度から紙の申告書は届かず、電子申請に必要な情報の通知書が送られるとされています。

保険料の対象になる賃金には、基本給のほか、残業代などの各種手当、通勤手当(定期券など)、賞与が含まれるとされています。出張旅費のような実費弁償的なものや退職金は含まれません。訪問系のヘルパーは、サービスの時間に応じて賃金が月ごとに変わりますから、賃金台帳を月ごとに集計できる形にしておくと申告の際に助かります。

概算保険料が一定額以上(一般には40万円以上、労災か雇用のどちらか一方だけの場合は20万円以上)の場合は、3回に分けて納める延納ができます。令和8年度の納期限は、7月10日、11月2日、翌年2月1日とされています。

事業を始めた最初の年の扱いは、成立した時期によって手順が変わることがあります。労働局や労働基準監督署に確認してください。

算定基礎届と月額変更届

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料は、標準報酬月額をもとに決まります。

算定基礎届は、毎年7月1日から10日までに提出します。7月1日現在で使用している被保険者全員が対象で、4月・5月・6月の3か月に支払った報酬をもとに、新しい標準報酬月額を決めます。決まった額は、その年の9月から翌年8月まで使われます。

日本年金機構の案内では、次のような人は提出が不要とされています。

  • 6月1日以降に資格を取得した人
  • 6月30日以前に退職した人
  • 7月の月額変更届を提出する人
  • 8月・9月に随時改定が予定されている人

報酬の支払基礎日数は、原則17日以上の月が対象になるとされています(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)。

月額変更届は、次の3つがすべて当てはまるときに必要です。

  1. 昇給・降給など、固定的賃金に変動があった
  2. 変動した月から3か月の報酬の平均で決めた標準報酬月額が、それまでと比べて2等級以上ずれた
  3. その3か月とも、支払基礎日数が17日以上ある(特定適用事業所の短時間労働者は11日以上)

届出は速やかに行い、変動月から数えて4か月目の標準報酬月額から改定されます。

賞与支払届は、賞与を支払った日から5日以内に提出します。年4回以上支払う賞与は、賞与ではなく通常の報酬として扱われます。登録した支払予定月に賞与を支払わなかった場合は、賞与不支給報告書を出す扱いです。

入社・退職のたびに発生する届出

社会保険の資格取得届・喪失届は、どちらも事実が発生してから5日以内です。退職の場合、資格を失うのは退職日の翌日です。健康保険証などは、事業主が回収するとされています。

雇用保険の資格取得届は被保険者となった月の翌月10日まで、喪失届と離職証明書は離職の翌日から10日以内です。離職票が交付されたら、速やかに退職した人へ渡す必要があります。遅れると、失業給付を受ける手続きに影響が出ます。

実務のポイント

ここからは、法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。

年間カレンダーに落とす

月 やること
5〜6月 賃金台帳の整理、年度更新の書類の確認
6月下旬 算定基礎届の用紙が届いたら、4〜6月の出勤簿・賃金台帳と照らし合わせる
7月10日前 年度更新・算定基礎届の提出(土日にあたるときの扱いは要確認)
9月 新しい標準報酬月額での社会保険料の控除を給与計算に反映
11月・翌2月 延納にしている場合の納付
随時 入社・退職・昇給・賞与のたびに届出の要否を確認

給与の改定と届出をセットで考える

時給の見直しや、手当の新設・変更をしたときは、その月に「月額変更届が要るかもしれない」と思い出せる仕組みが大切です。処遇改善加算の配分方法を変えたときなど、固定的賃金にあたるかどうか迷う場面は、年金事務所か社労士に早めに確認しておくと安心です。

迷ったときの相談先

  • 労働保険の年度更新:労働局・労働基準監督署
  • 社会保険の各届出:年金事務所
  • 雇用保険の各届出:ハローワーク
  • 手続き全体の代行・個別相談:社会保険労務士

まず今日やること3つ

  1. 令和8年度の年度更新・算定基礎届を、いつ・誰が出したか記録を確認し、来年度の提出予定日をカレンダーに入れる
  2. 入社・退職・昇給・賞与のときに確認する届出の一覧(上の表)を、事務担当者の目に入る場所に貼る
  3. 賃金台帳が、月ごと・職員ごとに集計できる形になっているか確認する

まとめ

社会保険・労働保険の手続きは、時期が決まっているものが多く、仕組みで防げるミスが大半です。一年のカレンダーと、入社・退職のときの確認表があれば、慌てずに済みます。次回、第6回は「利用者が増えない…相談支援事業所・ケアマネジャーとの関係づくりと、やってはいけないこと」を取り上げます。

本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。

参考にした資料