ふくしノート

訪問系障害福祉サービスの開業・運営を、行政書士の実務目線で

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スタッフを雇う前の労務手続き——契約・健康診断・就業規則

前回の記事では、国保連への請求から入金までのタイムラグと資金繰りの注意点を取り上げました。人件費は資金繰りのもう一つの柱です。今回は、社会保険・労働保険の加入手続きとは別に、スタッフを一人でも雇う際に必要になる労務まわりの実務を解説します。

労働条件通知書の交付

労働者を雇い入れる際は、労働条件を明示した書面(労働条件通知書)を交付する義務があります。2024年4月からは、すべての労働者に対して「就業場所・業務の変更の範囲」を明示することが新たに求められるようになりました。

訪問系の障害福祉サービスでは、ヘルパーが利用者の自宅など複数の場所で働くことになるため、この「就業場所」の記載方法に工夫が必要です。個々の利用者宅を逐一列挙するのではなく、「事業所が指定する利用者宅等」といった形で、変更の範囲を含めて明示しておくのが実務上一般的な対応です。

雇入れ時健康診断を忘れずに

労働安全衛生規則第43条により、常時使用する労働者を雇い入れるときは健康診断を実施する義務があります。パート・アルバイトであっても、雇用期間の定めがない、または1年以上の雇用が見込まれ、かつ所定労働時間が通常の労働者の4分の3以上であれば対象になります。

実施時期の目安は、入社前3か月から入社後1か月以内です。入社前3か月以内に本人が受けた健康診断の結果を証明する書類を提出してもらえれば、あらためて実施する必要はありません。血圧測定や胸部X線、血液検査など法定の11項目を満たす必要があり、未実施のまま放置すると労働安全衛生法第120条により50万円以下の罰金の対象となり得ます。人員体制の見込みが立った段階で、採用フローの中に健康診断の実施・確認を組み込んでおくと抜け漏れを防げます。

就業規則の作成・届出義務

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る義務があります。ここでいう「常時10人以上」は、正社員だけでなくパート・アルバイトも含めた人数で判断され、事業場(事業所)単位で数えます。訪問系サービスは登録ヘルパーを含めると人数が想像以上に多くなることがあるため、開業当初から人数の推移を把握しておくことをおすすめします。届出を怠ると30万円以下の罰金の対象となる可能性があります。

10人に達していない段階でも、労務トラブルを防ぐ観点から、早めに就業規則を整備しておく事業所は少なくありません。慌てて作成すると内容が不十分になりがちなので、余裕のあるうちに準備しておくとよいでしょう。

まとめ——スタッフを雇う前に押さえる3点

  • 労働条件通知書には、2024年4月の改正で追加された「就業場所・業務の変更の範囲」も明示する
  • 雇入れ時健康診断は対象者・実施時期・法定項目を確認し、採用フローに組み込んでおく
  • 就業規則の作成・届出義務は「常時10人以上」で発生し、登録ヘルパーを含めた人数管理が必要

労務まわりの体制が整ったら、次は加算の届出です。次回は、開業直後に見落としがちな加算届の期限について解説します。

本記事は一般的な情報を整理したものであり、労務手続きの詳細は事業形態や従業員数によって異なる場合があります。実際の手続きにあたっては、社会保険労務士など専門家にご確認ください。