感染症対策マニュアルの作り方:平時と発生時に分けて項目を整理する
こんにちは、ぺーさんです。
「ルールづくりシリーズ」の第7回は、感染症対策マニュアルです。
感染症対策は、指針・委員会・研修・訓練の体制を整えることが求められています。この体制の整理は介護事業所の感染症対策——指針・委員会・研修訓練は何をどこまで整えればよいかに書きました。今回は、その先にある「現場で使うマニュアルには何を書くのか」に絞ります。
基準の整理:確認できた範囲
訪問系サービスについて、自治体の資料で確認できた頻度は次のとおりです。
| 項目 | 介護保険(訪問系) | 障害福祉(居宅介護、重度訪問介護等) |
|---|---|---|
| 感染対策委員会 | おおむね6月に1回以上(ある市の資料では「年2回以上」) | おおむね6か月に1回以上(ある市の資料) |
| 指針 | 平常時の対策と発生時の対応を定める | 同左(衛生管理、支援にかかる感染対策、発生時の把握・拡大防止、医療機関や保健所との連携・報告など) |
| 研修・訓練 | それぞれ年1回以上 | それぞれ年1回以上(ある市の資料) |
ある市の資料には、感染症BCPの研修や訓練は、感染対策の研修や訓練と一体的に実施できるとの記載もあります。頻度や扱いは、サービスの種類や自治体で異なることがあるため、所轄の自治体の資料でご確認ください。
マニュアルの元になる資料
厚生労働省は、「介護現場における感染対策の手引き(第3版)」(令和5年9月)を公表しています。総論に、感染対策の基礎知識、利用者の健康管理、感染管理の体制づくり、職員の健康管理、感染症発生時の対応が並び、各論に感染症別の対策があります。手引きは、訪問系サービスについて「病原体を持ち込まない・持ち出さない・拡げない」ための配慮が必要だと整理しています(私の要約です)。障害福祉向けには、訪問系の感染対策マニュアル(令和2年12月)もあります。
マニュアルに入れる項目:平時と発生時に分ける
厚労省の資料を参考にした項目案です。項目の分け方は、私の実務経験にもとづく考えです。
平時
| 項目 | 手引き等で確認できる考え方 | マニュアルに書くこと |
|---|---|---|
| 標準予防策 | 汗を除く体液、血液、分泌物、排泄物は感染の危険性があるものとして扱う。感染症の有無にかかわらず実施する | 標準予防策を行う場面と、その基本 |
| 手指衛生 | 「1ケア1手洗い」が原則。石けんと流水、またはアルコール系消毒薬を使い分ける | 手洗いのタイミング、訪問先での実施方法 |
| 個人防護具(PPE) | 体液や嘔吐物に触れるときは手袋、飛沫のおそれがあるときはマスク、目や鼻、口が汚れるおそれがあるときはゴーグル等。原則使い捨てで、ケアごとに交換 | 場面別の装着、外し方、廃棄の方法 |
| 嘔吐物・排泄物の処理 | 手引きに手順が示されている(防護具の着用、換気、拡散を防ぐ拭き取り、消毒) | 手順と、訪問先に携行する物品 |
| 利用者・職員の健康管理 | 普段と異なる変化を早く見つける。症状のある職員は出勤しない(障害福祉向けの資料) | 検温、症状の報告、出勤停止の基準 |
消毒薬の種類や濃度は、手引きの原文で確認して書き写してください。
訪問系ならではの項目
施設と違い、訪問系は職員が利用者宅を移動して回ります。手引きの「持ち込まない・持ち出さない・拡げない」という考え方と、障害福祉向けの訪問系マニュアルの記載(器具は利用者ごとに交換する、体温計はできるだけ個人専用にする、など)をもとに、次のような項目を立てると現場に近づきます。ここから先の項目の立て方は、私の考えです。
- 携行品のリスト(手袋、マスク、エプロン、消毒薬、ごみ袋など)と、補充の担当
- 訪問先での手指衛生の場面(入室時、ケアの前後、退室時など)
- 訪問先で使った物品の扱い(利用者宅に置く物、持ち帰る物)
- 感染症が疑われる利用者への訪問の順番や、訪問の間隔の工夫
- 職員の体調不良時の連絡先と、出勤の判断(たとえば「発熱があれば出勤前に管理者へ電話する」など)
発生時
- 発見した職員から誰に、どの順で報告するか(管理者、代表者、嘱託医や協力医療機関、保健所)
- 手引きは、直ちに医師や保健所に相談・報告し、職員の出勤の調整、利用者・家族への説明などを並行して進めるとしています
- 障害福祉向けの訪問系マニュアルは、訪問の継続について、保健所と相談しながら生活に必要なサービスを調整するとしています
- 行政への報告の基準は、サービスや自治体で異なるため、所轄の自治体に確認します
たとえば、連絡の流れは次のように書けます(仮想の例文です)。
利用者に発熱・下痢・嘔吐などの症状があるときは、その場で管理者に電話し、指示を待つ。管理者は、かかりつけ医と(必要に応じて)保健所に相談し、代表者と担当のケアマネジャー等に共有する。
つくる手順
以下は私の考えです。
- 手引きの目次から、自事業所のサービスに関係する項目を選ぶ
- 現場の実際の手順(携行品、訪問先での手洗いの方法)と照らし合わせて書く
- 発生時の連絡先を、名前と電話番号まで書く
- 研修と訓練の教材として使い、気づいた点を書き直す
よくある形骸化
- 手引きの文章をそのまま貼り、訪問先で実際に何を持ち運ぶかが書かれていない
- 連絡先が古い
- 訓練で一度も使わず、職員がマニュアルの場所を知らない
- 職員の体調不良時の出勤ルールがあいまいで、シフトの都合で守られない
今日からできること
- 現在のマニュアルに、発生時の連絡先(保健所、嘱託医など)が最新かを確認する
- ヘルパーの携行品(手袋、マスク、消毒薬など)を点検する
- 次回の会議で、嘔吐物処理の手順を読み合わせる
まとめ
感染症対策マニュアルは、平時の予防と発生時の連絡・判断に分けて項目を整理すると、作りやすく、見直しやすくなります。次回は、最終回の第8回「喀痰吸引等の事業者登録」です。
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本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。

