行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

労務・採用

求人票の「試用期間・契約期間・更新の有無」の書き方:更新上限と無期転換の基本まで(求人票シリーズ第5回)

こんにちは、ぺーさんです。

「求人票シリーズ」の第5回です。今回は、求人票の中でも後からトラブルになりやすい「契約期間・更新の有無・試用期間」を取り上げます。「1年更新と聞いていたのに、更新されなかった」「試用期間中は時給が違うなんて知らなかった」といった食い違いは、多くの場合、求人票の書き方があいまいなことから始まります。

障害福祉や介護の事業所では、登録ヘルパーや契約職員など有期契約で働く方も多く、他人事ではありません。制度の中身と、書き方の注意点を整理していきます。

1. 有期か無期か、まず「期間」をはっきり示す

雇用契約に期間の定めがあるかどうかは、労働条件の基本です。労働基準法施行規則第5条第1項は、労働契約の期間に関する事項を、契約時に明示すべき事項に挙げています。募集時も、職業安定法施行規則第4条の2第3項で、労働契約の期間が明示事項に含まれています。

求人票では、「期間の定めなし」か「期間の定めあり(○か月/○年)」かを、誰が読んでも分かる形で書きます。

2. 更新の有無と、更新の判断基準

期間の定めがある場合は、更新の有無とあわせて「更新する場合の基準」も明示事項です。労働基準法施行規則第5条第1項は、更新の基準を、更新する場合がある有期契約の場合に明示するものと定めています。厚生労働省のモデル労働条件通知書では、次のような選択肢が示されています。

項目 モデル通知書での示し方(要約)
更新の有無 自動的に更新する/更新する場合があり得る/更新しない、など
判断基準 契約期間満了時の業務量、勤務成績・態度、能力、会社の経営状況、従事している業務の進捗状況、その他(複数選択可)

募集時の求人票でも、有期契約を更新する場合の基準は明示事項です(職業安定法施行規則第4条の2第3項)。

3. 更新上限の書き方

2024年4月から、更新の基準には「通算契約期間または更新回数に上限の定めがある場合は、その上限」も含めて明示することになりました。厚生労働省のリーフレットには、たとえば「通算契約期間は4年を上限とする」「契約の更新回数は3回を上限とする」といった書き方が示されています。

ポイントを整理します。

  • 上限は、通算の期間か、更新の回数のどちらかで書きます
  • 上限を設けていない場合に「上限なし」と書くことまでは、必須ではないとされています(書けば分かりやすくなります)
  • 更新上限を新たに設ける、または短くする場合は、あらかじめ理由を労働者に説明することが、有期労働契約に関する告示に定められています

4. 試用期間の書き方

試用期間は、求人票を出す段階(募集時)の明示事項です(職業安定法施行規則第4条の2第3項)。「試用期間あり(3か月)」のように期間を書きます。

大事なのは、試用期間中の労働条件が本採用後と違う場合です。厚生労働省の資料(平成30年の職業安定法改正のリーフレット)では、そのような場合は、試用期間中と本採用後のそれぞれの労働条件を明示するとされ、基本給を「試用期間中」と「本採用後」に分けて書く例が示されています。

たとえば、次のような書き方です(架空の記載例です)。

項目 記載例
雇用形態 契約職員(期間の定めあり:6か月)
更新の有無 更新する場合がある。判断基準は、勤務成績・態度、能力、事業所の経営状況
更新上限 通算契約期間は3年を上限とする
試用期間 あり(初回の3か月)
時給 1,300円(試用期間中)/1,350円(試用期間終了後)

なお、モデル労働条件通知書には試用期間の専用欄はありません。契約時の通知書でも、試用期間の扱いは労働条件として分かるように書いておく必要があると考えます(これは私の考えです)。

5. 無期転換ルールの基本

有期契約で働く方には、無期転換ルールも関係します。厚生労働省の説明では、同じ使用者との間で有期労働契約が更新されて通算5年を超えたとき、労働者が申し込めば、無期労働契約に転換できます。申し込むと、使用者が承諾したものとみなされ、その時点の有期契約が終わる日の翌日から無期契約になります。例として、契約期間が1年なら5回目の更新後に申込権が生じるとされています。

  • 申込みは、口頭でも法律上は有効ですが、書面で行い、確認書を交付することが推奨されています
  • 無期転換後の労働条件は、別段の定めがなければ直前の有期契約と同じ、というのが原則です。ただし、就業規則などで別に定めることもできます
  • 高度専門職や、定年後に継続雇用される方などには、労働局長の認定を受けた場合の特例があります
  • 更新上限を設けること自体は違法ではありませんが、無期転換を避けるのが目的の設定は問題になり得ます。個別の判断は最終的に裁判所が行います

なお、無期転換の申込機会などの明示ルールは、次回(第6回)で扱います。

求人票を書く側の注意点

以下は法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。

  • 「更新あり」とだけ書かず、判断基準まで書く。書いた基準が、実際の更新判断とずれないようにします
  • 更新上限は、求人票・労働条件通知書・就業規則で数字をそろえます。書類ごとに違うと、どれが本当か分からなくなります
  • 試用期間と本採用後で、時給・手当・勤務時間などが違うなら、必ず分けて書きます
  • 上限を設けるなら、事業所として理由を説明できるようにしておきます

求人票を読む側の注意点

  • 期間の定めがあるか、更新の基準は何か、上限があるかを確認する
  • 試用期間中の条件が、本採用後と同じかを確認する
  • 書かれていない、あるいは分かりにくい点は、応募前や面接で質問する(スペースの都合で「詳細は面談時にお伝えします」と付記される場合もありますが、労働条件は、求職者と最初に接触する時点までに明示することとされています)

まとめ

  • 期間の定めは「有期/無期」をはっきり書く
  • 更新の基準と、更新上限(期間か回数)を書く
  • 試用期間中の条件が違うなら、分けて書く
  • 無期転換は、通算5年を超える有期契約で申込権が生じる制度

次回の第6回は、2024年4月から必要になった「就業場所・業務の変更の範囲」の明示を取り上げます。

本記事は、公開されている資料をもとに一般的な制度を整理した情報提供です。個別の事案や最新の法令の扱いについては、社会保険労務士などの専門家や労働局にご確認ください。

参考にした資料