行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

労務・採用

求人票の金額は額面:社会保険料と税金で手取りはどう変わる?(求人票シリーズ 第4回)

こんにちは、ぺーさんです。

「求人票シリーズ」の第4回は、額面と手取りの違いです。

求人票に「月給22万円」と書いてあっても、毎月の給与明細で振り込まれる額が22万円になるわけではありません。「思っていたより少ない」と感じる原因の多くは、この額面と手取りの差にあります。書く側は、応募者が誤解しない書き方を。読む側は、手取りの見当をつける方法を。仕組みから整理していきます。

求人票の金額は、ふつう額面

ハローワークの求人情報の見方には、求人票の賃金は税込みの金額で、所得税のほか、雇用保険、健康保険、厚生年金、介護保険などの社会保険料が引かれるため、実際の手取り額は少なくなる、という趣旨の説明があります。求人票の月給は、控除前の総額である額面と考えて読むのが基本です。

額面から引かれるもの

給与から天引きされるものは、大きく社会保険料と税金に分かれます。

項目 内容 ポイント
健康保険 医療の保険。協会けんぽか健康保険組合など 事業主と本人で折半
介護保険 40歳から64歳の人が、健康保険料にあわせて負担 事業主と本人で折半
厚生年金 年金の保険 事業主と本人で折半
雇用保険 失業や育児休業などの給付の保険 本人と事業主で率が違う
所得税 給与から差し引かれる(源泉徴収) 扶養の状況などで変わる
住民税 前年の所得をもとに決まる 前年に収入がなければ、当初は引かれないこともある

社会保険料は、実際の給与そのものではなく、給与を区分けした「標準報酬月額」に料率をかけて計算します。通勤手当や残業手当も、この報酬に含まれます。

令和8年度の料率(兵庫県、協会けんぽ加入、一般の事業の場合。本人負担分)

  • 健康保険:協会けんぽ兵庫支部の料率は10.12%(令和8年3月分から)で、折半すると本人負担は5.06%
  • 子ども・子育て支援金:全国一律0.23%で、令和8年4月分の保険料から加わり、こちらも折半なので本人負担は0.115%
  • 介護保険(40歳から64歳):全国一律1.62%で、折半すると本人負担は0.81%
  • 厚生年金:18.3%で、折半すると本人負担は9.15%
  • 雇用保険:一般の事業で、労働者負担は1,000分の5(0.5%)

健康保険料率は保険者ごとに異なり、協会けんぽの料率も年度ごとに改定されます。健康保険組合に加入している事業所では、別の料率になります。実際の料率は、協会けんぽなどの最新の保険料額表でご確認ください。

手取りの目安を概算してみる

ここから先は、あくまで概算です。実際の金額は、加入している保険者、標準報酬月額の決まり方、端数処理、扶養や住民税の状況によって変わります。

前提

  • 兵庫県の事業所、協会けんぽ加入、一般の事業
  • 40歳未満、独身で扶養親族なし
  • 月の総支給額は220,000円(通勤手当や残業代のない月を想定)。標準報酬月額は220,000円
  • 所得税は、令和8年分の源泉徴収税額表・月額表(甲欄、扶養親族等0人)で計算

計算

項目 計算 金額
健康保険 220,000円 × 5.06% 11,132円
子ども・子育て支援金 220,000円 × 0.115% 253円
厚生年金 220,000円 × 9.15% 20,130円
雇用保険 220,000円 × 0.5% 1,100円
社会保険料の合計 32,615円
所得税 社会保険料を引いた187,385円が月額表の187,000円以上189,000円未満の区分に当たる 3,910円
手取り(住民税を引く前) 220,000円 − 32,615円 − 3,910円 183,475円

このほか、住民税が前年の所得に応じて引かれます。住民税を引く前の段階でも、額面の約83%です。40歳以上の人は、介護保険料が220,000円 × 0.81% = 1,782円加わります。この場合の所得税は3,840円になり、住民税を引く前の手取りは181,763円です。

以下は法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。額面から引かれる割合は、目安として「2割前後」と見ておくと、大きく外れないことが多いと感じます。ただし住民税や扶養の状況で人によって差が出ます。

通勤手当の扱い

通勤手当は、求人票では賃金欄とは別の欄に「実費支給(上限あり)」などと書かれることが多く、賃金欄の月額に含まれているか確認が必要です。

  • 社会保険料:通勤手当は標準報酬月額の対象となる報酬に含まれます。日本年金機構は、数か月分をまとめて支給する場合でも、含めて扱うとしています
  • 所得税:通勤手当には非課税の限度額があります。電車・バスの場合は、合理的な経路の定期券などの金額で、上限は月15万円です。限度額を超えた部分は課税されます
  • 最低賃金:第3回で書いたとおり、最低賃金の比較には通勤手当を含めません

つまり、通勤手当は社会保険料の計算には入りますが、税金はかかりにくいという性格があります。交通費が別に支給される場合は、その分が手取りに上乗せされるイメージです。

書く側・読む側それぞれの注意点

書く側(事業所運営者)

  • 求人票の月給は額面であることを、はっきり書く
  • 手取りの例を載せるなら、「モデル」であること、年齢や扶養などの前提、あくまで概算であることを併記する
  • 通勤手当が月給に含まれるのか別なのか、上限があるのかを明記する
  • 社会保険への加入条件を、労働時間などとあわせて説明できるようにしておく

事業主は、健康保険と厚生年金の折半分のほか、雇用保険(一般の事業は事業主負担が1,000分の8.5)や労災保険も負担します。労災保険は全額が事業主負担です。人件費は、額面より一段大きくなる点も、運営側は忘れずに見ておきたいところです。

読む側(求職者)

  • 求人票の金額は額面で、手取りは目安として2割前後少なくなると考えておく
  • 自分が40歳以上かどうかで、介護保険料の分が変わる
  • 手取りの見込みを知りたいときは、面接で「モデルの給与明細」を見せてもらえるか聞いてみる
  • 通勤手当が別なのか、上限はいくらかを確認する

まとめ

求人票の金額は額面で、そこから社会保険料と所得税、住民税が引かれます。手取りの目安は、額面から社会保険料と税金を順に引いて考えます。書く側は前提つきで、読む側は「額面の2割前後は引かれる」という感覚で、求人票を読み書きするとすれ違いが減ります。

次回の第5回は、「試用期間・契約期間・更新の書き方」です。

本記事は、公開されている資料をもとに一般的な制度を整理した情報提供です。個別の事案や最新の法令の扱いについては、社会保険労務士などの専門家や労働局にご確認ください。

参考にした資料