行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

現場の管理

利用者・ご家族から医療行為を頼まれたとき:医行為にあたらない範囲と、断り方・連絡先

こんにちは、ぺーさんです。

今回から「こんなときどうする?シリーズ」を始めます。毎週金曜日に、訪問介護や障害福祉の現場で迷いやすい場面を、制度や基準で確認できることを軸に整理していきます。第1回は、「医療行為を頼まれたとき」です。

なお、医療や法律の判断が必要な場面では、一般的な制度の説明にとどめます。個別の利用者さんの状態にあてはまるかどうかは、主治医・看護師、所轄の自治体にご確認ください。

場面(仮想の例です)

たとえば、こんな場面です。実際にあった話ではなく、説明のための仮想の例です。

訪問した先で、ご家族からこう頼まれます。「腰に湿布を貼ってください」「足の爪が伸びているので切ってください」「血圧を測って、高ければ薬を追加で飲ませて」「傷口に薬を塗ってください」。断ると、「前のヘルパーさんはやってくれた」と言われ、その場で判断を迫られます。

結論:その場で「やる」とも「できない」とも言い切らない

私は、次の3つをおすすめします。ここは法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。

  1. 頼まれた行為が「医行為ではない行為」として整理されているものかを確認する(その場で答えられなければ、「確認して連絡します」と伝える)
  2. サービス提供責任者(サ責)・管理者に連絡し、利用者さんの状態と、医師・看護職員の確認があるかを確かめる
  3. 確認がとれない、または医行為にあたるおそれがあるものは、丁寧に断り、看護師・主治医・ケアマネジャー(障害福祉では相談支援専門員)につなぐ

根拠:確認できた制度の整理

医行為と「原則として医行為ではない行為」

医行為は、医師の医学的判断や技術がなければ人体に危害を及ぼすおそれのある行為とされ、医師などの免許のない人が業として行うことは、医師法などで禁じられています。

一方で、厚生労働省は通知で、介護や障害福祉の現場で判断に迷いやすい行為のうち、「原則として医行為ではない」と考えられるものを示しています。主な通知は次の3つです。

  • 平成17年7月26日 医政発第0726005号(最初の通知)
  • 令和4年12月1日 医政発1201第4号(その2)
  • 令和7年12月26日 医政発1226第12号(その3)

令和6年度の老人保健健康増進等事業では、これらを現場向けに整理した「原則として医行為ではない行為に関するガイドライン」もまとめられ、厚生労働省のサイトで公開されています。

平成17年の通知で確認できた主な行為は、次のとおりです。

行為 通知で確認できた内容・条件
体温測定 水銀体温計・電子体温計で腋下、耳式電子体温計で外耳道
血圧測定 自動血圧測定器で測ること(その2で、半自動血圧測定器などが追加で整理されたとする資料がある)
パルスオキシメータの装着 新生児以外で、入院治療の必要がない人
軽微な傷の処置 軽微な切り傷・擦り傷・やけど等で、専門的な判断や技術が不要なもの
軟膏の塗布・湿布の貼付・点眼など 軟膏は「褥瘡の処置を除く」。医師・歯科医師・看護職員が、次の3条件を満たすことを確認していることが前提
爪切り・爪やすり 爪そのものに異常がなく、周囲の皮膚に化膿や炎症がなく、専門的な管理が必要ない場合
口腔内の刷掃・清拭 歯周病などがない場合の日常的なもの

医薬品の使用介助の3条件は、①入院・入所して治療する必要がなく、容態が安定していること、②副作用の危険性や投薬量の調整などのため、医師・看護職員による連続的な経過観察が必要な場合ではないこと、③内服薬の誤嚥や坐薬による出血の可能性など、使い方そのものに専門的な配慮が必要な場合ではないこと、です。

ここで大切なのは、「原則として」という点です。ガイドラインなどでは、病状が不安定で専門的な管理が必要な場合は、同じ行為でも医行為になり得るとされています。また、測定した数値をもとに、薬を飲むかどうかなどの医学的な判断をすることは医行為で、想定外の数値が出たときは医師・看護職員へ報告するものとされています。

その3では、お薬カレンダーへの薬のセットや、服薬の直前にPTPシートから薬を取り出すこと、蓄尿バッグの接続に関する行為が追加されたとされています。いずれも医師・看護職員の確認や、事前の本人・ご家族の依頼などの条件があります。使う前に、原文で条件を確認してください。

医行為にあたるもの、別の仕組みが必要なもの

上の表に載っていない行為や、条件を満たさない場合は、医行為にあたるおそれがあります。たとえば、褥瘡の処置、注射の実施そのもの(その2が整理しているのは、注射時の声かけや見守り、片付けなどです)、判断を伴う処置などです。

喀痰吸引と経管栄養は、社会福祉士及び介護福祉士法にもとづく特例の仕組みがあります。研修を修了して都道府県から認定特定行為業務従事者認定証の交付を受け、さらに事業所が登録特定行為事業者などとして登録を受けることで、登録した範囲で行えます。個人だけ、事業所だけでは行えません。詳しくは介護事業所における喀痰吸引・医療的ケアをご覧ください。

現場での動き方

断るときの伝え方(仮想の会話例)

「ご心配なお気持ちはよく分かります。ただ、今の私が自分の判断で行ってよいかを、事業所で確認する必要があります。看護師さんや先生に確認して、必要ならやり方も教わったうえで、改めてお返事させてください。今日は、お体を拭いてお着替えのお手伝いまでにさせてください」

ポイントは、「できない」で終わらせず、「確認してからお返事します」「誰に確認するか」を伝えることです。前のヘルパーがやっていたという話があっても、その場でそれを理由に引き受けないほうが安全です。

誰に何を連絡するか

連絡先 伝えること
サ責・管理者 頼まれた内容、依頼者、利用者さんの様子、その場の対応
ケアマネジャー・相談支援専門員 依頼の内容。サービス担当者会議などで、医療職に確認してもらう提案
訪問看護師・主治医 状態が安定しているか、専門的な管理が必要か、実施してよいか。異常時の連絡方法
ご家族 断った理由と、今後の確認の流れ

ガイドラインでは、サービス担当者会議などの機会に、必要に応じて医師・歯科医師・看護職員に専門的な管理が必要な状態かを確認することが考えられる、と示されています。

記録

実施してもしなくても、日時、頼まれた内容、誰に頼まれたか、対応、説明の内容、連絡した相手と時刻を残します。「断った」ことも大切な記録です。

事業所として整えておくこと

ここも、私の実務経験にもとづく考えです。

  • 行ってよい行為を、事業所として一覧にする(通知の条件、確認した医療職、確認日を併記)
  • 利用者ごとに、誰が・どこまで行うかを、計画書やサービス担当者会議の記録で確認できるようにする
  • 「頼まれたときの流れ(確認→連絡→記録)」を新人研修に入れ、断り方のロールプレイをする
  • 異常時の連絡先と連絡方法を、あらかじめ関係者で決めて共有する(ガイドラインも、事前に決めて共有することが現場での的確な対応につながるとしています)
  • 重要事項説明書や契約時の説明で、「ヘルパーが行えないこと」があることを伝えておく
  • 損害賠償責任保険への加入など、万一への備えを管理者として検討する(ガイドラインが検討を求めています)

まず今日からできること3つ

  1. 直近で頼まれた行為を、事業所内で出し合い、上の表と照らして「確認済み」「未確認」に分ける
  2. 「頼まれたら、その場で決めない」を、全ヘルパーに共有する
  3. 担当利用者ごとに、訪問看護師・主治医・ケアマネの連絡先を、すぐ見られる場所にまとめる

まとめ

医行為かどうかは、行為の名前だけでは決まらず、利用者さんの状態や条件で変わります。その場で答えを出さず、確認し、連絡し、記録する流れをつくっておくことが、ヘルパーを守り、利用者さんの安全にもつながると考えています。次回は第2回「保険外・サービス範囲外の依頼をされたとき」を取り上げます。

本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。

参考にした資料