サービス提供責任者の1日と、仕事が回らなくなる原因:基準上の業務とパンクを防ぐ切り分け
こんにちは、ぺーさんです。
今回から、日曜日に「マネジメントシリーズ」を連載していきます。管理者、サービス提供責任者(以下、サ責)、施設長のかたが、現場をまわしながら「人と仕事の仕組み」をつくるためのヒントを、制度の確認と実務の視点でお届けします。
第1回は、サ責の仕事です。「サ責に仕事が集まりすぎて、あふれてしまう」という悩みは、運営に携わってきた私の実感としても多いテーマです。基準上の業務を整理し、パンクしやすい場面と対策を考えます。
サ責の業務は、基準でどう決まっているか
介護保険の訪問介護
厚生労働省が公開している指定居宅サービス等の運営基準(平成11年厚生省令第37号)を確認しました。サ責に関わる主な条文は次の2つです(趣旨を私が要約しています)。
| 条文 | 内容の要点 |
|---|---|
| 第24条 訪問介護計画の作成 | 利用者の状況や希望を踏まえ、目標と具体的なサービス内容を記載した計画をサ責が作成する。居宅サービス計画に沿い、利用者・家族へ説明して同意を得て交付する。作成後は実施状況を把握し、必要に応じて変更する |
| 第28条第3項 サ責の職務 | 第24条の業務のほか、次の項目を行う |
第28条第3項に並ぶ項目を私なりにまとめると、次のとおりです。
- 利用の申込みに係る調整
- 利用者の状態変化や意向の定期的な把握
- 居宅介護支援事業者等への情報提供、サービス担当者会議への出席などによる連携
- 訪問介護員等への指示と利用者情報の伝達、実施状況の把握
- 訪問介護員等の能力や希望を踏まえた業務管理
- 訪問介護員等への研修、技術指導
- そのほか、サービス内容の管理に必要な業務
なお、同じ第28条の第1項と第2項では、管理者の役割が「従業者及び業務の管理を一元的に行うこと」「従業者に基準を守らせるため必要な指揮命令を行うこと」とされています。事業所全体の管理は管理者、個々の利用者に関する計画・調整・指導はサ責、というのが基本形です。管理者がサ責を兼務することも認められています(埼玉県の手引きで確認。条件は所在地の自治体でご確認ください)。
条文に列挙された項目には、請求事務、書類の整理、シフトの作成は出てきません。現場でサ責に集まっている仕事の多くは、条文に書かれていない周辺の作業だということです。
障害福祉サービス(居宅介護)
障害福祉サービスの根拠は、指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)です。居宅介護の章では、サ責の業務は次のように整理されていました。
- 居宅介護計画の作成(第26条)
- 利用の申込みに係る調整
- 従業者に対する技術指導などのサービス内容の管理
骨格は介護保険と同じで、「計画を作る」「申込みを調整する」「従業者を指導・管理する」の3本柱です。
加算を算定していると、仕事が増える
東京都の資料によると、特定事業所加算の体制要件には、研修計画の作成、定期的な会議(おおむね月1回以上、サ責が主宰)、サービス提供前後の文書等による指示と報告があります。初回加算も、算定基準上、サ責が初回の訪問を行うか、他の訪問介護員等の訪問に同行する場合が対象です。加算は収益を支える一方、サ責の仕事を増やす面もあります。要件は改定で変わるため、最新の告示・通知でご確認ください。
サ責の1日:仮想の例
ここからは、法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。サ責の1日は、自分の訪問とサ責業務が細切れに混ざるのが特徴です。たとえば、次のような1日です(仮想の例です)。
| 時間帯 | 主な仕事 |
|---|---|
| 朝 | シフト確認、欠勤・遅刻の連絡対応、ヘルパーへの申し送り |
| 午前 | 自分の訪問(この間は電話や事務が止まる) |
| 昼前後 | 記録の確認、ヘルパーからの報告対応、ケアマネジャーへの連絡 |
| 午後 | 新規のアセスメント、計画書の作成、担当者会議への出席 |
| 夕方 | 翌日のシフト調整、実績の確認、家族への連絡 |
| 随時 | 状態変化、事故・ヒヤリハットへの対応(予定にない、優先度が高い仕事) |
ポイントは、集中して考える仕事(計画作成・アセスメント)が、いつ中断されてもおかしくない仕事(電話・シフト調整・代行訪問)と同じ時間帯に押し込まれていることです。
仕事が回らなくなる原因と、パンクしやすい場面
パンクの主な原因は、次のとおりだと考えています。
- サ責が「訪問の穴埋め要員」になっている。 代行訪問が増えるほど、計画作成や実績確認が夜や休日に押し出されます。
- 新規受け入れが重なる。 アセスメント、計画作成、初回訪問、担当者会議が同時に発生し、そこに欠勤が重なると限界を超えます。
- 月末月初に業務が集中する。 実績確認、請求前のチェック、計画の見直しが同じ時期に重なります。
- 情報が「人」に付いている。 「あの利用者さんのことはサ責しか分からない」状態だと、サ責が休めず、問い合わせも全部集まります。
- 管理者・事務との線引きがあいまい。 「気づいた人がやる」になり、一番動ける人に仕事が寄っていきます。
対策:4つの視点
1. 業務を「サ責にしかできない」と「他の人でもできる」に切り分ける
基準上、計画の作成、状態の把握と判断、ヘルパーへの指示・研修などは、サ責が責任をもって行う仕事です。一方、その周辺の作業まで抱える必要があるかは別の問題です。
| 区分 | 例(私の考え) |
|---|---|
| サ責が担う | 計画の作成・同意取得、状態変化の判断、ヘルパーへの指示と指導、ケアマネジャーとの調整 |
| 分けやすい | 記録の転記や整理、書類のファイリング、実績表の集計、電話の一次受け、備品の管理 |
2. 管理者・事務との分担を決める
たとえば次のように、「誰が最終判断をするか」を先に決めておくと迷いが減ります。
- 勤怠・労務、採用、苦情や事故の最終判断、運営指導への対応、加算の管理:管理者
- 個別の利用者さんに関する計画・調整・指導:サ責
- 書類の整理、実績の集計、郵送や電話の一次対応:事務(または事務を担う人)
兼務の事業所では、「今は管理者の仕事」「今はサ責の仕事」と時間帯を分けて意識することが第一歩です。
3. ICTは「入れる」より「仕事を見直す」ために使う
厚生労働省は介護現場の生産性向上に関するガイドラインを公表しており、居宅サービス向けもあります。テクノロジーの活用に加え、業務の見直しやタスクシフト・シェアで職員の負担を減らす考え方が示されています。
以下は私の考えです。
- 利用者さんの情報は、1か所にまとめる(複数の紙・メモ・LINEに分散させない)
- ヘルパーからの連絡は、共有できる方法に統一し、「誰が見ても経緯が分かる」状態にする
- 個人情報の扱いのルールは、ツールを入れる前に決める
ただし、ICTが代わるのは「作業」であって、計画の内容や状態変化の「判断」ではありません。
4. 優先順位の付け方を決めておく
忙しいときほど、目の前の連絡に反応するだけで1日が終わりがちです。順位をあらかじめ決めておきましょう。
| 順位 | 種類 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 1 | 利用者さんの安全に関わること(状態変化、事故、体調不良の連絡) | すぐ対応 |
| 2 | 当日のサービス提供に穴があくこと(欠勤、キャンセル) | 当日中に手当て |
| 3 | 期限のある書類や手続き(計画の同意、実績、担当者会議の準備) | 期限から逆算して枠を確保 |
| 4 | 育成や仕組みづくり(重要だが緊急ではない) | 先にカレンダーに固定枠を入れる |
4番目が後回しになり続けることが、パンクを繰り返す最大の原因だと感じています。
今日からできること:まず3つ
- 1週間、仕事を記録する。 「サ責にしかできない」「他の人でもできる」に分けて書き出すと、分けられる仕事の量が見えます。
- 週に1回、訪問を入れない事務専用の時間を固定する。 90分でも構いません。計画作成や見直し、育成の準備にあてます。
- 「欠勤が出たとき」の手順を1枚にまとめる。 代行の順番、連絡先、利用者さんへの連絡担当を決めておくと、穴埋めがサ責の判断待ちになりません。
パンクの予兆チェックも置いておきます。3つ以上当てはまったら、切り分けを見直すタイミングです。
- 計画書や記録の作成が、勤務時間外にずれ込んでいる
- 代行訪問が、月に何度も発生している
- サ責が休むと、ヘルパーからの質問に誰も答えられない
- 管理者とサ責の役割分担を、文書で説明できない
まとめ
サ責の業務は、基準上は「計画を作る」「申込みを調整する」「状態を把握してヘルパーを指導・管理する」というシンプルな柱です。現場でパンクしやすいのは、条文にない周辺の作業や突発の対応が、すべてサ責に集まるからです。切り分け、分担、ICT、優先順位を少しずつ整えて、サ責が本来の仕事に時間を使える状態をつくりましょう。次回は「新人ヘルパーを育てる:同行訪問から独り立ちまでの手順」を取り上げます。
本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。
参考にした資料
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)|厚生労働省
- 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)|厚生労働省
- 指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)|厚生労働省
- 特定事業所加算の算定要件の留意事項|東京都福祉局
- 訪問介護の人員基準のポイント(新規指定の手引き)|埼玉県
- 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(解釈通知)|堺市掲載資料
- 介護現場の生産性向上関連情報(生産性向上に資するガイドラインの紹介)|WAM NET
- 「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」改訂のお知らせ|日向市