行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

開業記

【訪問介護開業記】スタッフ集めと開業直前に発生したトラブル

「訪問介護開業記」シリーズの第6回です。今回は初期メンバー集めと、開業直前に起きたトラブルについて振り返ります。

初期メンバーは「理想的な布陣」

開業時の初期メンバーは、自分を含めた計4名でした。いずれも前職で一緒に働いたことのある仲間で、全員が顔見知りです。内訳は、看護師(経験10年)、介護福祉士(経験10年)、実務者研修修了者(現場未経験)という体制でした。

経験10年のスタッフが2名もいれば、現場は十分に回せるだろうと考えていました。未経験のスタッフについても、まずは生活援助から入り、身体介護はベテランスタッフとの同行を重ねながら慣れてもらう予定でした。今振り返ると、机上ではほぼ完璧なスタート体制だったと思います。

スタッフ集めは開業の1年前から

メンバーに声を掛け始めたのは、開業の約1年前です。「もしかしたら自分で会社をやるかもしれませんが、一緒にやりませんか」というかなり軽い聞き方でしたが、3人とも前向きな返事をくれました。会社設立や事業開始時期を具体的に決めた後、改めて正式にお誘いしても、3人とも心境の変化はなく了承してくれました。

この時点で開業3か月前になっており、「人の部分はもう心配ない」と、どこかで安心しきっていたように思います。今思えば、この安心感こそが最大の落とし穴でした。

開業1週間前に起きた出来事

トラブルが起きたのは、開業1週間前でした。指定申請では、介護福祉士のスタッフを管理者兼サービス提供責任者、看護師のスタッフをサービス提供責任者として登録していました。

役所の方による現地確認(事務所訪問)の前日、管理者予定のスタッフから電話がかかってきました。「一緒に仕事をしたい気持ちはあるのですが、別の仕事がしたくて悩んでいます」という内容でした。

本音を言えば、「開業直前に言われても困る」という気持ちがなかったわけではありません。しかし、彼の今後の人生や、中途半端なモチベーションで働いてもらうことが周囲や利用者に与える影響を考えた結果、「自分がやりたいことをやった方がいいよ。こちらのことは気にしなくて大丈夫」と答えました。

管理者不在という大きな問題

最大の問題は、管理者兼サービス提供責任者が不在になることでした。この役割は事業所の中核であり、場合によっては開業自体ができなくなる可能性もありました。

幸いだったのは、看護師のスタッフが管理者を引き受けてくれたことです。また、サービス提供責任者についても、念のためもう1名配置したいと考え、実務者研修修了者のスタッフにもお願いしました。現場未経験という不安はありましたが、事務能力が高く介護保険の知識もあったため、全力でサポートすることを伝えた上で了承してもらいました。

自分自身は個人事業との兼務があり、非常勤ヘルパーとしてしか勤務できませんでした。管理者は常勤が必須であり、サービス提供責任者も最低1名は常勤である必要があるため、できる限り自分以外のスタッフで体制を整えることにしました。

役所対応と、なんとか迎えた開業日

現地確認の際、正直にスタッフが1人欠けたことを役所の方に相談しました。すると「すぐに書類を作り直していただければ、間に合いますよ」と言っていただき、その場で対応を進めて即日で書類を修正しました。結果として、開業までにすべての届出を終えることができ、無事に事業を開始することができました。

1人欠けたことによる現場への影響

当初は、現場の業務は自分以外のスタッフで対応し、どうしても回らない場合のみ自分がヘルプに入る予定でした。しかし、貴重なスタッフがスタート時点で抜けてしまったことで状況は一変し、自分もほぼフル稼働で現場に入る必要が出てきました。

それでも、「自分以外の初期メンバーを3人集めておいて本当によかった」と感じています。もし自分以外に2人しかおらず、そのうち1人が欠けていた場合、指定要件である常勤換算2.5人以上を満たせず、開業自体ができていなかったからです。これから訪問介護事業を開業される方には、常勤換算2.5人+αの人員確保を強くおすすめします。

まとめ

どれだけ信頼関係のある仲間であっても、こちらの期待通りに動いてくれるとは限りません。開業前からトラブルに直面することも十分にあり得ます。これは訪問介護事業に限った話ではなく、開業後も、スタッフ同士の不仲、待遇面への不満、業務負担の増加などを理由に、退職されるリスクは常に存在します。

スタッフを信頼することは大切ですが、信用しすぎたり、頼りすぎたりすることは危険です。最悪の事態を常に想定し、何が起こっても事業を継続できるよう、二重三重の予防線を張っておくことが重要だと、今回の経験から強く感じました。

次回は、開業から3か月目までに出会った利用者さんたちについて綴ります。