【訪問介護開業記】指定申請編——自分で申請書類を作った理由
「訪問介護開業記」シリーズの第5回です。今回は指定申請について振り返ります。
指定申請とは何か
訪問介護やデイサービスなどの介護事業を行うためには、いきなり「今日から始めます」というわけにはいきません。まず、指定権者(都道府県や市町村)に対して指定申請を行う必要があります。簡単に言えば、「私はこの地域で介護事業をやりたいです」と正式に申し出る手続きです。
指定申請では、数多くの書類を作成し、指定権者に提出します。指定権者はその書類を一つひとつ確認し、「人員」「設備」「運営体制」など、介護事業を行うための要件を満たしているかどうかをチェックします。問題がなければ指定番号が付与され、ようやく介護事業を開始できるようになります。この指定番号がなければ、介護報酬は1円も請求できません。指定申請は、介護事業のスタートラインと言えます。
指定申請に必要な書類について
代表的なものだけでも、指定申請書、勤務表、組織体制図、事業所の間取り図、外観写真・内観写真、運営規程、加算算定届などが必要です。指定権者によって細かい部分は異なりますが、イチからすべて揃えるのは、なかなか骨が折れる作業です。
時間的な余裕がない方は、専門家に依頼するのも一つの選択肢です。介護保険事業であれば社会保険労務士、障害福祉事業であれば行政書士に依頼すると、書類作成から申請まで一通り対応してもらえます。ただし、申請に必要な書類は、ほとんどの場合、役所のホームページに記入例とともに掲載されているため、それを見ながら作成すれば、誰でも「形」にすること自体は可能だと感じました。
私が行った指定申請の内容
私の事業所では、介護保険の訪問介護、障害福祉サービスの居宅介護・重度訪問介護、地域生活支援事業の移動支援という3つの指定申請を行いました。一見すると大変そうですが、実際に必要な書類や記載内容は、3つともほぼ同じです。まず訪問介護の申請書類を作成し、それをベースに他の申請書類を作っていきました。前職でも指定申請を経験していたこともあり、3つすべてを揃えるのにかかった時間は、だいたい1日程度でした。初めて作成する場合は、1週間くらいの作成期間を見ておくと安心だと思います。
特に注意しておきたいポイント
人員基準について
訪問介護事業所では、常勤換算で2.5人以上の職員を配置する必要があります。しかも、介護福祉士、実務者研修修了者(旧ヘルパー1級)、初任者研修修了者(旧ヘルパー2級)といった資格を持つ職員でなければなりません。そのため、最低でも3名の有資格者を確保しておく必要があります。私の場合、自分以外に3名のスタッフ(看護師、介護福祉士、実務者研修修了者)を確保しました。
管理者とサービス提供責任者
訪問介護事業所には管理者を置かなければなりません。管理者には資格要件はなく常勤であれば誰でもなれますが、常勤換算の人数には含まれません。また、サービス提供責任者の配置も必須です。介護計画の作成やサービス提供状況の管理を行う重要な役割で、介護福祉士または実務者研修修了者でなければなれないため、最低でも1名は必ず確保しておく必要があります。
加算と減算の確認
取得する加算についても、事前にしっかり精査しておく必要があります。特に処遇改善加算は、今や必須と言っても過言ではありません。処遇改善加算にはⅠ〜Ⅳまでの区分があり、新規申請時に取得できるのはⅡまでです。また、2024年度以降、虐待防止措置の未実施やBCP未策定による減算が始まっています。「知らなかった」では済まされないため、減算にならないよう必要な書類は必ず揃えておきましょう。
事業開始時期を決めて申請する
指定申請には期限があります。事業の種別や指定権者によって異なりますが、事業開始月の1か月半前までに申請が必要なケースが多いです。申請書類に不備があれば補正を求められますが、補正に応じない、期限までに補正を行わないといった場合は、申請自体が却下される可能性もあります。私の場合、指定番号がもらえたのは事業開始の約1週間前と、かなりギリギリでした。指定権者から連絡がなくても、慌てずに事業準備を進めて問題ないと感じました。
まとめ
書類作成は、社労士や行政書士といった専門家に依頼することも可能です。ただし、私個人の意見としては、できる限り自分で作成することを強くおすすめします。申請書類を自分で作成することで、事業所として必要な要件を自然と理解できるようになり、これはその後の事業所運営に必ず役立ちます。
たとえば人員基準(常勤換算2.5人)を理解していなければ、職員が退職した際に基準を満たさなくなっていることに気づかず、後から指定権者に指摘され、要件を欠いていた期間の介護報酬返還や、最悪の場合は指定取消といったリスクもあり得ます。介護事業をやると決めたのであれば、最初は他人に任せず自分でやってみる。その経験が、必ずその後の事業所運営に活きてきます。
次回は、初期メンバー集めのエピソードと、指定を受ける直前に起きたトラブルについて綴ります。