行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

開業記

【訪問介護開業記】立志編——なぜ訪問介護を始めようと思ったのか

「訪問介護開業記」シリーズの第2回です。今回は、自分の経歴と、なぜ訪問介護を始めようと思ったのかについて振り返ります。

私の経歴について

大学を卒業してからのキャリアは、いわゆる一直線のものではありませんでした。最初は飲食店でアルバイトをし、その後、医療機器メーカーの営業職へ。現場で医療に関わる人たちと接する中で、「医療・介護の世界で働く」という感覚が少しずつ自分の中に根付いていきました。

その後、医療法人の広報スタッフとして勤務し、さらにご縁があって老人ホームの入居者仲介営業の会社へ転職しました。この会社が自社で老人ホームを運営することになり、私は施設長として約3年間現場に立つことになります。

施設長時代は、行政への指定申請や各種届出、スタッフの採用や教育、シフト管理、売上管理まで、いわば「施設運営のすべて」を担う立場でした。大変ではありましたが、この経験が今の自分の大きな土台になっているのは間違いありません。

ただ、時間が経つにつれて、会社の方針と自分自身の考え方に少しずつズレを感じるようになりました。悩んだ末に退職を決意し、その後は地元に戻って個人事業主として働き始めました。

個人事業主になって感じたこと

個人事業主としての生活は、正直に言えば「気楽」でした。時間の使い方も自由で、誰かに指示されることもありません。

一方で、やってみて初めて分かったこともたくさんありました。嬉しいことや辛いことがあっても、それを共有できる相手が周りにいない。収入は月によって大きく変動し、先が見えにくい。もし病気やケガをしたら、代わりに仕事をしてくれる人はいない。

「この働き方を、一生続けられるだろうか?」そんな不安が、頭の片隅から消えないようになっていました。自由である反面、すべてを一人で背負う働き方。それが自分にとって本当に最適なのか、考えるようになった時期でもありました。

訪問介護を始めようと思った理由

次に何をするか考えたとき、真っ先に浮かんだのが「介護事業」でした。老人ホームでの勤務経験があり、ヘルパーとしての経験は無いが介護制度のことはある程度分かっている。この経験を活かさない手はない、と思ったのです。

ただ、いきなり老人ホームを立ち上げるのは、規模も資金もハードルが高すぎます。デイサービスやグループホームといった「箱モノ事業」も、初期投資を考えると現実的ではありませんでした。

そこで辿り着いたのが、訪問介護でした。初期投資が比較的少なく、少人数でもスタートできる。人員基準があるため自分一人ではできませんが、信頼できる数人からでも始められる点に、大きな魅力を感じました。

さらに、身内に重度の要介護者がいたことも大きな理由です。最初から「利用者がいる状態」でスタートできるというのは、これから事業を始める身としては非常に心強い条件でした。

準備した3つのこと

事業を始めるにあたって、特別なことをしたわけではありません。ただ、最低限「これだけは押さえておこう」と決めていたことが3つあります。

お金 会社設立費用、事務所の準備費用、当面の運転資金。「思ったよりかかる」「思ったより入ってこない」ことを前提に、余裕を持って準備しました。

人 友人や知人など、信頼できる人に声をかけ、協力してもらえる体制を少しずつ整えていきました。最初から完璧な人材を集めることはできませんが、「人に恵まれるかどうか」は事業の命だと感じています。

計画 毎月どれくらい売上が立つのか、どれくらい支出があるのか。かなり細かくシミュレーションをしました。甘く見積もらず、むしろ悲観的なくらいでちょうどいい、というのが今の実感です。

まとめ

老人ホームで施設長として過ごした時間は、自分にとって大きな自信につながっています。行政対応、スタッフ管理、売上管理など、当時は必死でしたが、その経験は今も訪問介護事業の運営にしっかりと活きています。

一方で、老人ホーム時代はあくまで“中間管理職”でした。最終的な意思決定は会社が行い、自分はその方針に沿って動く立場。これからは、自分自身が会社のトップとして経営やマネジメントを担うことになります。

正直なところ、楽しみな気持ちと同じくらい、不安もありました。それでも、「自分で決めて、自分で進める」という働き方に挑戦してみたいという思いが、当時は勝っていました。

次回は、会社設立にあたって何をしたのか、何につまずいたのかについて書いていきます。