行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

現場の管理

保険外・サービス範囲外の依頼をされたとき:草むしり・ペット・家族分の家事をどう扱うか

こんにちは、ぺーさんです。

「こんなときどうする?シリーズ」の第2回は、保険外やサービス範囲外の依頼をされたときです。

第1回は利用者・ご家族から医療行為を頼まれたときでした。今回は、医療ではなく、家事や身の回りの「ちょっとしたお願い」の場面です。頼む側に悪気はなく、断る側も心苦しい。だからこそ、ヘルパー個人の判断に任せず、考え方を事業所で共有しておきたいテーマです。

場面(仮想の例です)

たとえば、次のような場面です。実際にあった話ではなく、説明のための仮想の例です。

掃除の時間に、利用者さんから「せっかく来てくれたのだから、庭の草むしりもお願い」。同居のご家族からは「私の分のお昼ご飯も一緒に作って」。別の日には、「犬の散歩に行ってきて」「窓ガラスを全部拭いて」と頼まれます。

結論:その場で引き受けず、まず「計画に入っているか」を確認する

私は次の流れをおすすめします。ここは法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。

  1. 頼まれた内容が、ケアプラン・訪問介護計画(障害福祉では支給決定の内容・計画)に入っているかを確認する
  2. 入っていなければ、その場では引き受けず、理由と「別の方法があること」を伝える
  3. サ責・管理者に報告し、ケアマネジャー(相談支援専門員)へつなぐ

根拠:確認できた制度の整理

介護保険の訪問介護(生活援助)

訪問介護のサービス行為の区分は、老計第10号(平成12年3月17日)で示されています。この通知の生活援助のなかに、含まれない行為として、次の2区分が示されています。

区分 確認できた例
商品の販売・農作業など、生業の援助的な行為 商品の販売、農作業など
直接、本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為 主として家族の利便に供する行為(利用者以外の人の洗濯・調理・買い物、利用者が使わない居室の掃除、来客の応接、自家用車の洗車など)
日常的な家事の範囲を超える行為 草むしり、花木の水やり、ペットの世話、家具の移動・修繕、大掃除、窓ガラス磨き、床のワックスがけ、室内外の修理、植木の剪定、正月や節句のために特別な手間をかけて行う調理など

上の表は、複数の自治体の資料が、老計第10号の内容として紹介している例示です。事業運営の取扱いを示した老振第76号(平成12年11月16日)も、あわせて根拠に挙げられています。原文の細かい文言は、通知そのものでご確認ください。

同居のご家族がいる場合は、単身のときと考え方が違います。生活援助は、単身、または同居のご家族が障害・疾病などで家事を行うことが困難な場合に提供されるとされています。一方で、ある自治体の資料には、一律・機械的に不可とはしないよう求める国の通知があると示されています。判断は自治体で違い得るので、所轄にご確認ください。

障害福祉の居宅介護(家事援助)

平成28年3月10日の通知(障障発第310001号)では、居宅介護の家事援助の対象は、単身の利用者、または同居のご家族の障害、疾病、就労などの理由で、利用者やご家族が家事を行うことが困難な人とされています。

範囲や量は、支給決定を行う市町村のガイドラインで示されている場合が多いようです。たとえばある市のガイドラインでは、利用者以外のご家族の分の調理・洗濯は対象外とされています。市町村で扱いが違うので、所轄の自治体の基準をご確認ください。

保険外サービスと組み合わせる場合

平成30年9月28日の厚生労働省の通知(介護保険最新情報Vol.678)は、介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供するときの取扱いを示しています。訪問介護の例では、提供時間の前後や合間に、草むしりやペットの世話などを保険外サービスとして提供する例が挙がっています。ただし、次のような条件があります。

  • 別のサービスであることを利用者さんに説明し、内容・時間・利用料について同意を得る(文書での丁寧な説明)
  • 運営規程を別に定め、会計を区分する
  • 保険外サービスの時間は、訪問介護の時間に含めない。利用料も別に請求する
  • 契約の前後に、担当のケアマネジャーへ内容や時間を報告する
  • 認知機能の低下に配慮し、訪問介護と保険外に切り替えるタイミングを丁寧に説明する
  • 苦情の受付窓口を設ける

ご家族分の調理を、利用者さん本人の分と同時に行うような「同時一体的な提供」は、認められないとされています。なお、この通知は介護保険サービスが対象です。障害福祉サービスの場合の扱いは、所轄の自治体にご確認ください。

現場での動き方

断り方の例(仮想の会話)

「お気持ちはありがたいのですが、草むしりは、介護保険の訪問介護では対象にならないことになっていて、私の判断ではお受けできないんです。ごめんなさい。ケアマネさんに相談して、シルバー人材センターや民間の家事代行など、別の方法がないか、事業所からもお話しさせてください」

ポイントは3つです。①「できない」より「制度上、対象外」と伝える、②ヘルパー個人の好き嫌いではないことを示す、③代わりの案内先をあわせて伝える。

案内先の例

  • 担当のケアマネジャー・相談支援専門員(計画やサービス全体の見直し)
  • シルバー人材センターなどのインフォーマルサービス、民間サービス(自治体の資料でも案内先として挙げられています)
  • 市町村の高齢者・障害者向けの独自サービス(内容は自治体で違うので、窓口で確認)

記録と報告

頼まれた日時、内容、頼んだ人、断った理由、案内した先を記録し、サ責・管理者に報告します。同じ依頼が繰り返される場合は、ケアマネジャーにも共有し、必要なら計画の見直しを検討してもらいます。断ったあとに苦情になる場合の流れは、別の回で書く予定です。

事業所として整えておくこと

  • 介護保険の運営基準(第8条)では、サービスの開始前に、運営規程の概要など利用者さんのサービス選択に役立つ重要事項を記した文書を交付して説明し、同意を得ることが求められています。この機会に、契約書・重要事項説明書に、「対象にならない行為」の例(草むしり、ペットの世話、家族分の家事、大掃除など)を書き、契約時に口頭でも説明する
  • 「頼まれたら断る」ではなく、「頼まれたら報告し、案内する」までを手順にする
  • 断り方の例文を共有し、新人研修でロールプレイをする
  • 保険外サービスを自社で行う場合は、上の通知の条件をひとつずつ満たせるか、所轄の自治体に確認したうえで判断する
  • 依頼の受付メモ(日時・内容・対応・案内先)の様式をそろえる

まず今日からできること3つ

  1. 直近1か月に頼まれた「範囲外」の依頼を、事業所で洗い出す
  2. 重要事項説明書に、「できないこと」の例が書かれているかを確認する
  3. 断り方の例文を1枚にまとめ、ヘルパー全員に渡す

まとめ

範囲外の依頼への対応は、ヘルパー個人の人間関係に頼るのではなく、「制度上の整理」「代わりの案内先」「契約時の説明」の3つを、事業所であらかじめ用意しておくことが大切だと考えています。次回は第3回「金銭・貴重品の預かり」を取り上げます。

本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。

参考にした資料