行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

現場の管理

シフト作りと、急な欠勤への備え:訪問介護・居宅介護の管理者が整えておきたい仕組み

こんにちは、ぺーさんです。

今回は「マネジメントシリーズ」の第3回です。テーマは「シフト作りと、急な欠勤への備え」。

訪問介護の朝は、電話一本で予定が崩れることがあります。「熱があって行けません」という連絡が入った瞬間から、管理者やサービス提供責任者(サ責)の頭はフル回転です。誰なら代われるか、間に合う時間か、利用者さんにはどう伝えるか。

慌てないために、まず制度で決まっていることを確認し、そのうえで現場の仕組みを整理してみます。

制度・基準の整理

ここは、e-Gov法令検索や厚生労働省の資料で確認できた内容です。

人員基準と常勤換算

  • 介護保険の訪問介護は、事業所ごとに置く訪問介護員等の員数が、常勤換算方法で2.5以上とされています(指定居宅サービス等の基準5条1項)
  • サービス提供責任者は、利用者の数が40人又はその端数を増すごとに1人以上を置くのが基本です(同条2項)。利用者の数は前3か月の平均値で見ます
  • 障害福祉の居宅介護も、従業者の員数は常勤換算方法で2.5以上です(指定障害福祉サービスの基準5条1項)

常勤換算とは、従業者の勤務延べ時間数を、常勤の従業者が勤務すべき時間数で割って人数に直す方法です。厚生労働省の解釈通知では、常勤の勤務時間が32時間を下回る場合は32時間を基本とすること、1人分として数えられるのは常勤の勤務時間数までであることが示されています。

欠勤が長引くと、この計算にも影響します。

勤務体制を定めておく義務

訪問介護の運営基準では、利用者に適切なサービスを提供できるよう、事業所ごとに訪問介護員等の勤務の体制を定めておくこととされています(30条1項)。あわせて、事業所の訪問介護員等によってサービスを提供することが原則です(同条2項)。解釈通知では、原則として月ごとの勤務表を作り、日々の勤務時間や職務内容、常勤・非常勤の別などを明確にするとされています。居宅介護でも、同じ趣旨の規定があります。

運営指導の確認文書としても、勤務体制一覧表や勤務実績表が挙げられています。

休業手当と年次有給休暇

労働基準法には、シフトに関わる次の規定があります。

  • 休業手当(26条):使用者の責に帰すべき事由による休業の場合、休業期間中、平均賃金の60%以上の手当を支払う必要があります。厚生労働省の「シフト制」の留意事項にも、事業所の事由で休業させた場合には休業手当が必要になる旨が書かれています
  • 年次有給休暇の時季変更権(39条5項):労働者が請求した時季に与えるのが原則で、請求された時季に与えると「事業の正常な運営を妨げる場合」に限り、他の時季に与えることができます
  • 年5日の取得(39条7項):年10日以上の年休が付与される労働者には、基準日から1年以内に5日を、使用者が時季を定めて与える義務があります

厚生労働省の解説には、代わりの人を配置できるのに、その配慮をしないまま時季変更権を使うことは許されないという趣旨の判例が紹介されています。

シフト作りについての国の資料

サ責の業務には、訪問介護員等の能力や希望を踏まえた業務管理があると、厚生労働省の資料に示されています。また、「シフト制」の留意事項では、シフトを作る前に労働者の意見を聴くこと、確定したシフトを知らせる期限や方法を話し合って決めておくこと、確定後に変更する場合の期限や手続をあらかじめ合意しておくことが望ましいとされています。

実務のポイント

ここからは、法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。

1. シフトは「余白」を含めて作る

  • 定期訪問を先に置き、後から単発の依頼や同行訪問を入れる順序にする
  • 休み希望の締切日を決めて、希望を先に反映する
  • 1人に予定を詰め込みすぎず、移動時間にも余裕を持たせる
  • 利用者ごとに、主担当・副担当を決めておく

2. 代替要員リストを作る

欠勤が出てから「誰が入れる?」と考えると、時間が足りません。利用者ごとに、代わりに入れる人をあらかじめ表にしておきます。以下は仮想の例です。

利用者 主担当 副担当 代替可能な人 代わる際の注意点
Aさん(身体介護) ヘルパー甲 ヘルパー乙 サ責 手順書の○番を確認
Bさん(家事援助) ヘルパー乙 ヘルパー丙 ヘルパー甲 鍵の受け渡しに注意
Cさん(移動支援) ヘルパー丙 ヘルパー甲 管理者 資格要件を満たす人のみ

障害福祉のサービスは、サービスの種類ごとに従業者の資格や研修の要件が違います。代替の候補は、要件を満たす人に限ります。リストには、各人の資格と研修の修了状況も書き添えておくと安心です。

3. 欠勤連絡のルールを一本化する

  • 連絡先は、個人の携帯ではなく事業所の代表電話や当番の携帯にする
  • 連絡手段は電話を基本にする(メッセージだと読まれないことがあるため)
  • 「わかった時点ですぐ」が基本。始業前の目安時刻を決めておく
  • 伝えてほしい内容は、症状の詳細ではなく、出勤できるか、いつ頃復帰できそうか、当日の訪問で引き継ぐことがあるか

体調不良を伝えにくい雰囲気があると、無理に出勤するリスクも生まれます。「休んでいいから、早めに教えてね」と日頃から伝えておきたいところです。

4. 当日の代替手配の流れ

  1. 欠勤の連絡を受けたら、影響する訪問を時間順にすべて書き出す
  2. 排泄介助、食事、服薬の見守りなど、時間をずらせない訪問に優先順位をつける
  3. 副担当や代替可能な人に、近い順に連絡する
  4. 代われない訪問は、時間の変更や別の日への振替を、利用者さんとケアマネジャーに相談する
  5. 誰がどの訪問に入るかが変わったら、全員に共有し、記録に残す

どうしても事業所として対応できない場合の考え方として、運営基準10条が参考になります。適切なサービスの提供が困難と認めた利用申込者について、居宅介護支援事業者への連絡や、ほかの事業者の紹介といった必要な措置を速やかに講じるという規定です。これは利用の申込みを受けたときの規定で、そのまま当てはまるわけではありませんが、抱え込まずに早く連絡するという姿勢は参考になります。

管理者やサ責が自ら現場に入る場面も出てきますが、それが常態になると、本来の仕事(調整、指導、相談対応)が止まります。リストの更新は、管理者を守る仕組みでもあります。

5. 利用者さんへの連絡とキャンセルの対応

連絡の際は、次の点を押さえます。

  • 連絡は事業所の名前で行う(担当者個人の事情は詳しく話さない)
  • 伝える順序は「変更のお詫び → 代わりに誰が何時に伺うか → 困りごとがないか確認」

たとえば、次のような伝え方があります(仮想の文例です)。

「担当のヘルパーが急に体調を崩しまして、本日は代わりに別のヘルパーが伺います。お時間は変わりません。突然のご連絡になり申し訳ありません」

利用者さんの都合による当日のキャンセルについては、キャンセル料の有無や連絡の期限を、契約書や重要事項説明書にあらかじめ定めて説明しておくのが基本です。取り扱いに迷うときは、契約内容を確認し、指定権者にも相談してください。キャンセルの理由や連絡を受けた時刻、ケアマネジャーへの連絡は、そのつど記録します。

6. スタッフ側の賃金・休暇の扱い

利用者さんのキャンセルで予定が空いた場合の賃金や休業手当の考え方は、事情によって変わり得ます。個別の判断は、社会保険労務士や労働基準監督署にご確認ください。

年休は、時季変更権を使う前に、まず「代わりを立てられないか」を考えます。早めに希望を聞くことが、結果として急な欠員を減らします。

今日からできること

まず、次の3つから始めてみてください。

  1. 利用者ごとの「主担当・副担当」を書き出し、担当が1人しかいない利用者を洗い出す
  2. 欠勤連絡の連絡先と手段、連絡の目安時刻を決めて、全員に周知する
  3. 代替手配の流れ(上の1〜5)を紙1枚にして、事務所に貼る

チェックリストとして使う場合は、次の項目を確認してみてください。

  • 月ごとの勤務表を作り、実績とあわせて保管している
  • 代替要員リストが、直近1か月以内に更新されている
  • 欠勤の連絡ルールが、全員に伝わっている
  • 利用者さんへの連絡と、キャンセル時の記録の方法が決まっている
  • 年5日の年休取得が進んでいない人を把握している

まとめ

シフトは、「人を当てはめる作業」から「欠員が出ても回る仕組み」へ考え方を変えると、管理者の負担が減ります。急な欠勤は必ず起きるものとして、代替要員リストと連絡ルールを先に作っておきましょう。

次回は第4回「ヒヤリハットが出てくる職場づくり」です。

本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。

参考にした資料