行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

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マンションで障害者グループホームは開設できる? 大阪の裁判が示した物件選びの落とし穴

こんにちは、ぺーさんです。

障害福祉事業の開業で、特に相談が多いのがグループホーム(共同生活援助)です。そして物件探しで「分譲マンションの一室を借りたい」という話が出ると、私はまず管理規約の確認をおすすめしています。

今回の「判例シリーズ」第3回は、マンション内の障害者グループホームをめぐって、管理組合と運営法人が争った裁判を取り上げます。

事案の概要

社会福祉法人が、大阪市内のマンションの複数の住戸で、知的障害のある方が暮らす障害者グループホームを運営していました。入居者の方にとっては、約20年にわたる生活の場でした。

ところが、消防署の指導などをきっかけに、グループホームには防火対象物としての点検など、消防法令上の義務が生じることが分かりました。そこでマンションの管理組合は、この負担が他の区分所有者の利益を損なうとして、「住宅以外の用途で使っており、管理規約に違反する」として、グループホームとしての使用の停止を求めて2018年6月に提訴しました。

一審:グループホーム側が敗訴

大阪地方裁判所は、令和4年1月20日の判決で、管理組合の主張を認めました。報道などによると、判断の骨子は次のとおりです。

  • グループホームは入居者の「生活の本拠」ではあるが、マンションの管理規約が想定する「住宅」には当たらない
  • 消防法令上の点検や設備の負担が生じるなど、他の区分所有者の負担につながる

ただし、判決の即時執行(仮執行)は認められず、すぐに退去を迫られる状況にはなりませんでした。

この判決に対しては、障害者団体などから強い批判の声明が出されました。

控訴審:和解で運営継続へ

社会福祉法人は控訴しました。大阪高等裁判所では、令和6年(2024年)7月1日に和解が成立しています。報道によれば、和解の内容は次のとおりです。

  • 「グループホームは障害者の地域生活を支える住宅である」ことを確認する
  • 裁判所は「グループホームの各住戸は入居者の生活の本拠として使われており、グループホームとして使うことは管理規約に違反しない」との所見を示した
  • 和解の前に、管理組合が令和6年6月に管理規約を改訂し、消防法令に適合するグループホームをマンション内で開設・管理する際の細則を定めた

つまり、一審では負けたものの、最終的には運営が続けられる形で決着しました。提訴から約6年、入居者の方も法人も長い間、不安定な立場に置かれたことになります。

開設をめざす事業者が学べること

以下は判決そのものではなく、私の実務経験と行政書士としての視点にもとづく考えです。

1. 契約の前に、管理規約を必ず読む 規約の用途欄に「専ら住宅として使用する」といった定めがないか、「住宅」がどう定義されているかを確認します。分譲マンションはもちろん、賃貸でも、契約書の使用目的や管理会社・オーナーの承諾の有無が問題になります。

2. 「後から負担が増える」事情を洗い出す 今回の争いの背景には、消防法令上の点検や設備の負担がありました。グループホームは、一般の住宅よりも厳しい防火対策が求められることがあります。設置や点検の費用を誰がどう負担するのか、事前に管理組合やオーナーと話しておくと、後のトラブルを避けやすくなります。

3. 管轄の消防署・自治体に、開設前に相談する 建築基準法や消防法上の扱いは、建物の構造や自治体の運用によって異なります。物件を決める前に、管轄の消防署と自治体の障害福祉課に相談し、必要な設備と手続きを確認しておくことが大切です。

4. 管理組合・近隣への丁寧な説明を惜しまない 今回の事案は、法律の解釈以前に、管理組合と事業者との関係がこじれた結果ともいえます。障害のある方が暮らす住まいだと最初に説明し、理解を得る努力が欠かせません。

まとめ

グループホームは、入居者の方の大切な「暮らしの場」です。物件選びの失敗は、開設できないだけでなく、開設後に「出ていってほしい」と言われるリスクにもつながります。契約の前に、管理規約・消防・近隣への説明という3つを確認しておくことをおすすめします。

本記事は、報道や公開された解説などをもとに事案を整理した一般的な情報提供です。判決原文のすべてを確認したものではなく、個別の事案については弁護士・行政書士などの専門家にご相談ください。

参考にした資料