自然災害BCPの考え方:訪問系事業所が最初に決めること
こんにちは、ぺーさんです。
「ルールづくりシリーズ」の第5回は、自然災害BCPです。前回はBCPの訓練を取り上げました。今回は、訪問系事業所が自然災害BCPの最初の一歩として何を決めればよいのかを整理します。
BCPを作らなければならない理由や、感染症BCPとの違い、研修・訓練の頻度は、障害福祉サービスの業務継続計画(BCP)——感染症・自然災害、訪問系事業所は何を整えればいいのかに書きました。この記事では繰り返さず、自然災害の具体的な中身に絞ります。
厚労省のガイドラインで確認できること
厚生労働省は、介護事業所向けと障害福祉サービス事業所向けに、自然災害発生時の業務継続ガイドラインとひな形を公表しています。介護向けのガイドラインの共通事項は、次の構成になっています。
| 区分 | 項目 |
|---|---|
| 総論 | 基本方針、推進体制、リスクの把握、優先業務の選定、研修・訓練と見直し |
| 平常時の対応 | 建物・設備の安全対策、電気・ガス・水道・通信・システムが止まった場合の対策、衛生面、必要品の備蓄、資金手当て |
| 緊急時の対応 | BCP発動基準、行動基準、対応体制、安否確認、職員の参集基準、重要業務の継続、職員の管理、復旧対応 |
| 連携 | 他施設との連携、地域との連携 |
訪問系に固有の点として、ガイドラインには次の趣旨の記述があります。
- 発災時に職員が利用者宅を訪問中または移動中であることを想定し、対応中の利用者への支援手順や、移動中の対応方法を検討しておく
- 台風など被害が大きいと予想される場合にサービスの休止・縮小を余儀なくされることを想定し、その基準をあらかじめ定めておく
- サービスを長期間休止する場合は、居宅介護支援事業所と連携し、必要に応じて他事業所の訪問サービス等への変更を検討する(障害福祉向けでは、相談支援事業所や地域の関係機関との連携が書かれています)
最初に決める4つのこと
ここから先の進め方は、法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。ガイドラインの全項目を一度に埋めようとすると止まってしまうので、次の4つから決めるのをおすすめします。
1. どんな災害が起きうるかを把握する
ガイドラインは、自治体が公表するハザードマップなどで災害リスクを把握することを挙げています。国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」では、洪水・土砂災害・高潮・津波のリスクを地図に重ねて確認できます。ガイドラインの記述は事業所の所在地を念頭にしたものですが、訪問系では、これに加えて利用者宅と移動経路を見ておくと実用的です。
2. 優先する業務と、利用者ごとの優先度を決める
ガイドラインは、利用者の生命・健康を維持するために必ず実施する最低限の業務を「重要業務」として選ぶとしています。例として食事・排泄・与薬が挙げられ、医療依存度が高い場合は医療的ケアも含まれます。職員が足りないときは、手順の見直しや省力化できる備品の準備を検討するとされています。
「利用者ごとの優先度」をつける方法そのものは、私が確認した範囲のガイドラインには示されていません。以下は私の考えです。たとえば、次のようなシートで訪問の優先順位を決めておきます。
| 区分 | 目安(仮想の例) | 災害時の考え方(仮想の例) |
|---|---|---|
| A | 医療的ケアがある、独居で食事・排泄の介助が必須 | 安全が確認でき次第、最優先で安否確認と訪問 |
| B | 独居だが、家族や近隣の支援が見込める | まず電話等で安否確認、必要なら訪問 |
| C | 家族が同居し、支援が当面なくても生活を維持できる | 状況が落ち着いてから再開 |
区分の基準は、事業所の利用者像に合わせて管理者・サービス提供責任者と決めてください。
3. 安否確認と連絡の方法を決める
ガイドラインでは、利用者と職員の両方の安否確認の方法を整理し、複数の連絡先・連絡手段(固定電話、携帯電話、メール等)を把握しておくことが望ましいとされています。伝言ダイヤルなど複数の手段の活用も挙げられています。職員の参集は、通勤の可否や所要時間を考慮してルールを決めて周知し、あわせて参集しなくてよい状況も定めて、職員を危険にさらさないようにする、という趣旨です。
4. 代替手段を決める
休止・縮小の基準、他事業所への引き継ぎ、電話での状況確認への切り替えなど、「通常どおり訪問できない場合」の選択肢を書いておきます。
平時の備え:連絡先一覧と備蓄
ガイドラインは、行政支援が始まる目安を被災後3日目としたうえで、それまでは自力で業務を継続できるよう備蓄することを求めています。食料品、看護・衛生用品、日用品、災害用備品が例に挙がり、有効期限があるものは定期的に点検します。訪問系は事業所で備蓄する品目を、利用者宅に持参する物と分けて考えると整理しやすくなります。
チェックリストの例です。
- 利用者ごとの緊急連絡先(複数)と、かかりつけ医・担当のケアマネジャー等の連絡先
- 職員の緊急連絡先と、自宅の所在地からの参集の可否
- 居宅介護支援事業所、相談支援事業所、協力医療機関、自治体の窓口の連絡先
- 備蓄品の品目・数量・有効期限の一覧と、点検の担当者
- 連絡先一覧の更新日(年1回以上の更新を予定に入れる)
よくある形骸化
以下も私の実務経験にもとづく考えです。
- ひな形の文言をそのまま使い、利用者宅や移動中の想定が抜けている
- 連絡先が古く、退職した職員や閉鎖した事業所が載っている
- 優先度が管理者の頭の中にしかなく、休んでいる職員が見られない
- 備蓄の点検が担当者の異動で止まっている
今日からできること
- ハザードマップポータルサイトで、事業所と利用者宅の災害リスクを確認する
- 利用者を優先度A・B・Cに仮分けして、シートにする
- 緊急連絡先一覧の更新日を確認し、古ければ今月中に更新する
まとめ
自然災害BCPは、ハザードマップでリスクを知り、優先業務と利用者ごとの優先度を決め、安否確認と代替手段を用意し、平時に連絡先と備蓄を整える、という順で組み立てると進めやすくなります。次回は、第6回「ハラスメント防止の方針と相談窓口」です。
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本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。