行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

体制整備

虐待防止委員会の進め方:構成員・議題・議事録

こんにちは、ぺーさんです。

「ルールづくりシリーズ」の第2回は、虐待防止委員会の進め方です。

委員会は「設置している」ことと「機能している」ことが別物になりやすい取り組みです。少人数の事業所では、集まる人がそもそも数人しかいません。何を話し、何を残せば「開催した」と言えるのか。迷う管理者は多いと思います。まず制度上確認できたことを整理し、そのうえで進め方を考えます。

委員会の位置づけと、確認できたこと

障害福祉サービス(居宅介護の基準)でも、介護保険の訪問介護でも、虐待防止のための対策を検討する委員会を「定期的に開催する」とともに、その結果を「従業者に周知徹底する」ことが求められています。障害福祉の条文には、テレビ電話装置等を活用して行うことができるとも書かれています。

厚生労働省の資料(障害者虐待防止委員会、身体的拘束等の適正化委員会と虐待防止責任者の役割)では、委員会の役割が3つ示されています。

  • 虐待防止のための計画づくり
  • 虐待防止のチェックとモニタリング
  • 虐待が起きた後の検証と、再発防止策の検討

つまり、事後対応だけでなく、起こさないための年間の計画と点検も、委員会の仕事だと整理できます。

構成員

同じ資料では、委員長は通常、管理者が務めるとされています。委員としては、虐待防止責任者(サービス管理責任者等)、看護師、事務長、利用者や家族の代表、苦情解決の第三者委員などが例に挙がっています。一方で、「最低人数は設けない」とされ、法人単位で委員会を設置することも認められるとされています。人数を揃えること自体が要件ではないと読めます。

なお、この資料は施設・事業所全般を想定した例です。訪問系の小さな事業所が、看護師や利用者代表を必ず入れなければならないという意味ではありません。

開催頻度

ここは資料によって表現が異なるので、慎重に書きます。

資料 頻度の書き方
障害福祉の基準(居宅介護) 「定期的に開催」とあり、回数は書かれていない
国の手引き・資料(障害福祉) 「定期的に」とし、回数を明示しない
ある市(障害福祉)の案内 少なくとも1年に1回は開催が必要
ある市(介護保険・訪問介護)の指導資料 年1回以上

私が確認した範囲では、国の資料は「定期的」とし、年1回以上とするのは自治体や解説の資料でした。回数の目安は自治体で違い得るので、所轄の自治体に確認してください。

他の委員会との合同開催

厚生労働省の資料に、虐待防止委員会と身体拘束等の適正化委員会は合同で開催してよい、虐待防止委員会で身体拘束等の適正化について検討しても差し支えない、という趣旨の記載があります。また、小規模事業所の取組例として、定期的な事業所の会議やケースカンファレンスなど、既存の会議に合わせて開催する方法や、オンライン会議の活用、法人単位での設置が挙げられています。

介護保険側でも、他の会議体と一体的に設置・運営してよいとする解説資料があります。感染対策委員会などと合わせられるかは、資料や自治体で扱いが違う可能性があるので、実施前に確認してください。

議題の例

ここからは、法令の内容ではなく、私の実務経験にもとづく考えです。毎回同じ議題を機械的に並べると、話し合いが形だけになります。私は、年間の計画に沿って議題を振り分けると回しやすいと考えます。

たとえば、年2回開催する場合の仮想の例です。

回 議題の例
前期 前年度の振り返り(ヒヤリハット、苦情、身体拘束の有無)/指針・チェックリストの見直し/年間研修計画の決定
後期 研修の実施状況/上半期の事例検討/職員のストレスや勤務状況の確認/来年度の課題

議題にしやすい材料は、次のとおりです。

  • ヒヤリハット・気になった場面:不適切なかかわりに近い場面が報告されていないか。報告が少ないときは、少ない理由も議題になります(ヒヤリハットが出てくる職場づくりは、別の回で書く予定です)
  • 身体拘束等の有無と記録:実施の有無、実施した場合の記録が揃っているか
  • 苦情・相談:虐待につながりかねない内容が含まれていないか
  • 研修計画:実施状況、参加できなかった職員へのフォロー
  • 職員の状況:残業や欠員などで、職員に余裕がなくなっていないか
  • 他事業所や報道の事例:自分たちの場面に置き換えるとどうなるか

事例を扱うときは、利用者や職員の名前を出さず、場面だけを共有する形にするのが安全だと私は思います。

議事録の残し方

議事録は、「委員会を開いたこと」と「その結果を職員に周知したこと」の両方を示す記録になります。自治体には様式を公開しているところもあるので、探してみてください。仮想の記載項目を示します。

項目 書く内容
日時・場所・方法 対面か、オンラインか
出席者・欠席者 役職と氏名
議題 上の議題のうち、扱ったもの
主な意見 意見の要点。事例は個人が特定されない形で
決定事項・宿題 誰が、いつまでに、何をするか
周知の方法と日付 会議で回覧した日、朝礼で伝えた日など。欠席職員への周知も
次回の予定 日時と、主な議題

私は、決定事項に「誰が・いつまで」を必ず入れることを勧めます。前回の宿題を次回の最初に確認できるので、委員会が単発で終わりません。

小規模事業所での運営の工夫

  • 人数は3名程度でよいと割り切る:管理者(委員長)、サービス提供責任者(担当者)、現場のヘルパー1名など。国の資料は最低人数を設けていません
  • 既存の会議と同日に開催する:会議の終わりに30分を確保し、議題と議事録を分けておく
  • オンラインを併用する:条文でテレビ電話装置等の活用が認められています。非常勤のヘルパーや外部の委員が参加しやすくなります
  • 年間の議題カレンダーを先に作る:開催月ごとの議題を決めておけば、直前に慌てません
  • 外部の視点を1つ入れる:国の手引きには、利用者の家族や苦情解決の第三者委員などの外部委員を入れてチェック機能を持たせる方法が挙げられています。開催のたびでなくても、機会を作ることを考えてみてください

まず今日やること3つ

  1. 直近1年の委員会の議事録を出して、「議題」「決定事項」「周知の方法」が書かれているか確認する
  2. 次回開催の日程を、既存の会議に合わせて決める
  3. 上の議題例から、次回に扱うものを3つ選ぶ

まとめ

委員会は、大人数で立派に開くことより、数人でも「話し合った内容と、決めたことを残す」ことが大切だと私は考えます。次回は、委員会と密接に関係する「身体拘束等の適正化」を取り上げます。

指針・マニュアルの雛形が必要な場合は、私が実際の事業所で使用している内容をもとに作成した「障害者虐待防止・身体拘束適正化 指針+マニュアル+同意書セット」(11,000円・税込)も販売しています。よろしければご覧ください。

本記事は、公開されている資料をもとに一般的な内容を整理した情報提供です。制度の最新の扱いや個別の事案については、所轄の自治体や専門家にご確認ください。

参考にした資料