行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

現場の管理

利用者さんは「お客様」のはず。福祉の現場で、その意識が薄いのはなぜか

こんにちは、ぺーさんです。

訪問介護の現場で利用者さんと話していると、必ずと言っていいほど出てくる話題があります。「前に来ていたヘルパーさん(看護師さん)が、実はこうだった」という話です。人の愚痴は盛り上がります。私も、介助の合間にいろいろな話を聞いてきました。

今回は、そこから感じたことを書きます。事業所の経営者・管理者の方はもちろん、サービスを利用している方にも読んでいただければうれしいです。

現場で耳にする話

事故で障害を負い、ご家族と自宅で暮らしている男性の利用者さんから、こんな話を聞きました。入浴や排せつ、家事全般に介助が必要な方です。

  • その日の気分で、態度が変わるヘルパーがいた
  • 看護師が、やたらとおむつやパットを勧めてきた。普段は普通の下着で過ごしていて、おむつやパットは絶対に嫌だという方なのに

この種の話は、この利用者さんに限りません。あちらこちらの現場で、同じような話を耳にします。

コンビニに置き換えてみる

同じことをコンビニで考えてみてください。

店員の態度が悪かったら、「もうこの店には来たくない」と思うはずです。自分で選んだおにぎりをレジに持っていったのに、「売れ残っているので、こちらにしてください」と勝手に別の商品に替えられたら、「なんで店の都合で替えるんだ」と怒るのではないでしょうか。

利用者さんが言われているのは、これと同じことです。本人の希望を聞かずに、スタッフの都合を押し付ける。お客様にそんなことをすれば、普通は商売になりません。

「お客様」だと思われていない

福祉の現場では、利用者さんがお客様だという意識を、あまり持っていない人が多いと私は感じています。だから、平気でため口になる。上から目線の態度になる。希望を聞く前に、自分たちのやりやすい方法を決めてしまう。

もちろん、丁寧に向き合っているヘルパーや看護師もたくさんいます。ただ、利用者さんから聞こえてくる話の多さを考えると、「一部の人の問題」で済ませてよい状況ではないと思います。

なぜ、それがまかり通るのか

理由は、利用者さんの立場が圧倒的に弱いからです。

この業界は慢性的な人手不足です。今来てくれているヘルパーや看護師が来なくなったら、自分の生活が成り立たなくなる。そう思えば、利用者さんは文句を言えません。スタッフの側も、その事情をわかっています。立場の強弱が、態度に表れてしまうのです。

コンビニなら、お客様は別の店に行けます。介護や看護の現場では、「別の事業所に変える」という選択肢が、現実にはほとんどありません。

接遇研修をしても変わらない

どの事業所も、接遇の研修は年に1回程度はやっていると思います。それでも、研修で聞いた話を意識しないまま、普段のケアにあたっている人が多いのが現実ではないでしょうか。

理由の一つは、仕組みにあると考えています。ケアの質が高くても低くても、接遇が良くても悪くても、基本の介護報酬や診療報酬は同じです。手を抜いても収入が変わらないなら、力を抜く人が出てくるのは、ある意味で自然なことです。今の仕組みのままでは、この業界はなかなか変わらないと感じています。

私の提案:指名料の仕組みを作ってほしい

個人的には、ヘルパーや看護師を指名できる、指名料の仕組みを導入してほしいと思っています。

指名してもらえれば、事業所にも職員にも収入が上乗せされます。そうなれば、選ばれるために接遇を磨き、ケアの質を上げようという動機が生まれるはずです。

ただし、利用者さんの自己負担が増えると、指名したくてもできない方が出てきます。そこで、指名料は利用者さんの自己負担にせず、報酬の中から支払われる仕組みにしてほしいと考えています。

補足です。現行の制度では、介護保険の訪問介護などで、指名料を利用者さんから上乗せして徴収することは認められていません(厚生労働省の通知「介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて」平成30年9月28日)。お金を払える人が優先されるようになり、公平性が損なわれるおそれがあるためです。だからこそ私は、利用者さんの自己負担ではなく、報酬の仕組みの中で、質の高いケアが評価される形を考えてほしいと思っています。

利用者さんの立場でお読みの方へ

希望を伝えることは、わがままではありません。「普段はこうしている」「これは嫌だ」と感じたときは、遠慮せずに事業所の管理者や担当のケアマネジャー(相談支援専門員)に相談して大丈夫です。担当のスタッフに直接言いにくいときも、事業所には相談窓口があります。

まとめ

  • 福祉の現場でも、利用者さんは「お客様」である
  • 立場が弱い利用者さんは、不満があっても言えない
  • 報酬が同じなら、接遇やケアの質に差をつける動機が働きにくい
  • 質の高いケアが評価される仕組みを、報酬の側で作ってほしい

現場にいる一人として、まず自分の事業所から、利用者さんを「お客様」として迎える意識を持ち続けたいと思います。