行政書士として障害福祉サービスの指定申請を支援し、自らも障害福祉・介護保険サービスの事業所を経営する立場から、開業・運営の実務を発信

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就労継続支援A型を閉鎖して全員解雇は無効:札幌高裁が求めた「丁寧な説明」と「再就職支援」

こんにちは、ぺーさんです。

障害福祉事業所を運営していると、うまくいかなくなったときにどう事業を閉じるかまで考えておく必要があります。今回の「判例シリーズ」第2回は、就労継続支援A型事業所の閉鎖にともなう解雇が争われた裁判例を取り上げます。

A型事業所は、利用者さんと雇用契約を結ぶ「雇用型」のサービスです。閉鎖すれば、それは利用者さんの解雇になります。事業を閉じる場合でも、解雇のルールから逃れられないことを示した判決です。

事案の概要

札幌高等裁判所の令和3年4月28日判決(労働判例1254号28頁。ネオユニットほか事件)です。

  • 株式会社が運営していた就労継続支援A型事業所を閉鎖することになり、従業者2名と、知的障害または精神障害のある利用者8名が解雇されました
  • 解雇の予告は平成29年3月30日、事業所の閉鎖・解雇は同年4月30日で、決定から実行まで約1か月でした
  • 利用者らは「解雇は無効だ」として、会社などに損害賠償を求めました

一審と控訴審で結論が分かれた

一審(札幌地裁 令和元年10月3日) 事業の廃止には必要性があったとして、解雇そのものは有効と判断しました。ただし、障害のある利用者への配慮が足りなかったとして、慰謝料(各5万円)の支払いは命じています。

控訴審(札幌高裁 令和3年4月28日) 一審とは逆に、解雇は無効と判断しました。理由として紹介されているのは、次のような点です。

  • 障害の特性を踏まえて、事業所閉鎖の事情を丁寧に説明し、利用者の理解を得るよう努めるべきだったのに、それが十分でなかった
  • 再就職の都合を考えて閉鎖時期を決めたり、合意による退職に応じてもらえるよう調整したりするなど、解雇を避けるための努力が尽くされていなかった
  • 説明の機会が限られ、解雇の決定から実行まで約1か月と短かった

その結果、利用者らへの慰謝料は各30万円、弁護士費用は各3万円が認められたと紹介されています。その後、この判決は確定したとされています。

何が問題だったのか

一般に、会社が経営上の理由で行う整理解雇では、次の4つの点が総合的に判断されます。

  1. 人員を減らす必要が本当にあるか
  2. 解雇を避けるための努力を尽くしたか
  3. 解雇する人の選び方が合理的か
  4. 本人や労働者側への説明・協議が十分か

この事案では、特に2と4が重くみられました。しかも、A型の利用者さんには障害特性があります。「説明会を開いた」というだけでは足りず、その方が理解できる形で説明しているか、次の働き先を探す手助けをしているかまで問われた、という点が重要だと思います。

行政手続き上の義務も別にある

事業を閉じるときの義務は、雇用の面だけではありません。以下は一般的な整理です。

障害者総合支援法などにもとづき、指定障害福祉サービス事業者は、事業を廃止・休止する場合、予定日の1か月前までに指定権者へ届出が必要です。あわせて、サービスの継続を希望する利用者さんに、他の事業者との連絡調整などの便宜を提供する義務もあります。

つまり、「1か月前に届出をすれば足りる」と考えるのは危険です。届出は行政上の最低ラインで、労働者である利用者さんへの解雇の手続きは、これとは別に、より丁寧に進める必要があると考えたほうが安全です。

事業所が備えておきたいこと

以下は判決そのものではなく、私の実務経験と行政書士としての視点にもとづく考えです。

  • 閉鎖・縮小が現実的になった段階で、早めに専門家(社会保険労務士・弁護士・行政書士)に相談する
  • 利用者さん一人ひとりの障害特性に合わせた説明方法(口頭と書面、ご家族や相談支援専門員の同席など)を用意する
  • 他の事業所への移行、一般就労への支援など、次の行き先を具体的に探す。閉鎖時期はその状況に合わせて決める
  • 説明や協議の内容を、日付・参加者・やり取りが分かる形で記録に残す
  • 廃止・休止の届出と、雇用関係の手続きを、一つのスケジュールにまとめて管理する

まとめ

経営が苦しくなったときこそ、利用者さんへの説明と次の居場所探しに、時間と手間をかける必要があります。「閉じるから仕方ない」では済まないというのが、この判決の大きなメッセージだと受け取りました。開業したばかりの事業所さんも、「もしものとき」の手順をあらかじめ考えておくと安心です。

本記事は、公開されている判例解説などをもとに事案を整理した一般的な情報提供です。判決原文のすべてを確認したものではなく、個別の事案については弁護士・社会保険労務士などの専門家にご確認ください。

参考にした資料